エリちゃんといっしょ ページ24
私はエリちゃんと通形先輩、緑谷君と一緒に文化祭準備の様子を見て回っていた。この学校の文化祭は随分と騒がしいらしい。
私はエリちゃんの表情が動くのをただじっと眺めていた。
緑谷「Aさん、大丈夫？」
貴「心配なさんな、大丈夫よ。」
私は浮遊して空気に流されないよう自分と緑谷君を繋いでいた。そのせいなのか、緑谷君は頻繁に私の顔を見ていた。エリちゃんも私の顔を少し見ては目を逸らしていた。
そのうち食堂についてみんなでご飯を食べ始めた。
私はと言えば特に腹も空いていないのでただ空を見ながら一人で頭の中で将棋を打っていた。自分で自分の弱点を打つせいか、なかなかどうして決着がつかない。
エリ「お姉ちゃん……」
貴「どうしたのかな、エリちゃん」
エリ「……お姉ちゃんも踊るの？」
貴「残念、私は踊らないんだ。」
残念そうな顔をしながら下を向いてしまった。
なんとなく悲しそうに俯く彼女の頭を撫でた。
私は彼女を見て笑って言った。
貴「けど私が作った映像がスクリーンに出るんだ。
だから、見ててくれる？」
エリ「うん！」
彼女はとても嬉しそうに笑ってくれた。
それが、何故だかとても嬉しかった。ジジイもこんな気持ちだったのか。孫ができるって小さい子が自分を慕ってくれているような気分になるというのは、存外悪いものじゃないな。
そんなことを思いながら私はエリちゃんを抱っこした。
貴「私は個性でとても苦労したんだ。悪い人達に捕まるかもしれないからいつも家族に守ってもらってたんだ。けど、最近悪い人たちに捕まっちゃったんだ。」
エリ「今も、悪い人に捕まってるの…？」
不安そうに眉を下げる彼女の頭を撫でながら宙に浮かんで私は今いる景色を見せてみた。彼女は私から目を離さなかったけど、私にはこの雄英高校で楽しそうに幸せそうに高校生活を楽しもうとする人達が見えた。
それは私の心を定めるには十分なものだった。
貴「ヒーローが助けてくれたよ、だから私の"個性"を誰かの為に使ってあげようって思えたんだ。エリちゃんもそう思えたらその時は私に一番に教えてね。」
そう言って私が小指を差し出すとエリちゃんも小指を出してくれた。可愛らしい、子供らしい小さい手だった。
個性で苦しむ、ある意味同じ境遇の子。
私は彼女の心が少しでも救われて欲しいと、初めはいい駒だと思っていた少女にいつの間にかそんな事を思っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 589人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楸 | 作成日時：2022年11月27日 0時
