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その後私は見事にみんなを丸め込み"演出班"に入る事に成功した。私はみんなの案がまとまるまで隅の方で見守っていた。
爆豪とかいう子が割といい子でビックリした。
口と目付きが悪いだけで根はいい子なのだろう。
轟「A、顔色悪いぞ。」
貴「個性の影響で背中の皮膚全部"ただれてる"からね。」
轟「なら早くリカバリーガールのところに…」
轟君は"ただれてる"という言葉に過敏に反応していた。
何か彼にそういうトラウマでもあるのか。少し不思議に思いながら私は轟君に理由を説明した。安心したような戸惑ったような顔の彼に私は薬を持っているからと説明すると、八百万さんを紹介されそのまま別の部屋に連れていかれた。
幸い薬は持っていたから服を脱いで薬を塗り包帯も巻き直して貰った。
貴「ありがとね、八百万さん。」
八百万「いえ、人助けはヒーローの本質ですから。」
そういう八百万さんはとても輝いて見えた。
私はヒーローって存在自体がよくわかってない。何故なら私は今までヒーローを遠ざけながら生きてきたからだ。バーちゃん以外のヒーローをほとんど見た事がない。
だからそれを"ヒーローの本質"だと笑顔で語る彼女が眩しかった。
八百万「Aさんは何故ヒーローに？」
貴「私は＿＿＿＿私の大事な"
八百万「Aさんの、その大切な方は"将棋"がお好きなんですか？」
私が濁した表現でそう言ったにも関わらず的を射た言葉で返してくる彼女を思わず私は時が止まったような感覚になった。
初めて将棋を指した時から感じていた"先見力"。
とても賢く聡い人間。私の僅かな言葉と行動から私の真意を探るのが上手く、それでいて私の中の言葉で返してくる。下手をすれば私の方が更にボロを出しそうになる。
貴「ふふっ、それ以上話すなら"捨てる"覚悟をしてもらわないとね。」
私がそう言うと彼女は一瞬で顔を
私は彼女に「手伝ってくれてありがとう、楽しかったよ八百万さん。」と言ってすぐに自分の部屋に戻った。だが、部屋に戻ったあとで気づいた。あんな状況で部屋を出るべきではなかった。
ジジイにこの話をしたらきっと笑いながらバカにされるな。
貴「ジジイ、元気かな。」
私は爪をまた一つ犠牲にして空中にプカプカと寝そべっていた。部屋の窓から見えた"夜空"は家から見える空と同じだった。
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作者名：楸 | 作成日時：2022年11月27日 0時
