NO.5 歩･オリジン ページ13
その直後、私の意識はパタリと途切れた。
･
「＿＿＿＿＿だね、背中の皮膚がただれてる。」
「そうですか。」
目が覚めたら、見えてきたのは保健室のベット。
私はうつ伏せで寝かされてたみたいだ。
貴「相澤さん、おはよー…」
相澤「起きたか、どうだ調子は。」
貴「どうにもこうにも最悪だよ。」
理由は分かってる。
こんなことになるからジジイは私に"個性"を使わせようとしなかった。幼い頃、一度だけジジイの怪我を治した事があった。その時、私は背中の皮膚がただれるように無くなった。
それからだ、ジジイが私に個性を使わせなくなったのは。
相澤「お前、こうなるって分かってたのか。」
貴「もちろん。私の個性は"要素"がいるのよ。」
相澤「"要素"？」
私は簡潔に話した。
ただ個性の話をしただけなのに。
ヒーローってのは大変な仕事なんだな。
そんな悲しそうな顔をするなんて。
貴「私の個性はそれに見合った"要素"が必要になる。"対価"って言った方がわかりやすいね。それはなんでもいい、自分の"血"でも"記憶"でも、それがたとえ"命"だったとしても。
けど、失ったものは戻らない。」
そうだ、戻らなかったんだ。
私はバーちゃんと同じ"個性"だった。
ジジイはいつも自慢げに話してた。
公安の"ヒーロー"だった、私のバーちゃんの話を。
相澤「だから、お前の祖父は"個性"を隠したってわけか？」
私はそれに小さく頷いた。
でも、"無個性"だと言われてたあの頃はそんなに悪くなかった。無個性でも友達はいたし、何より誰も私をバカにしなかった。私はとても、周りに恵まれていた。
それを今になって痛感した。
貴「けど、もういいよ。ヒーローになって最短で"巨悪"を詰む。」
相澤「A、これだけは覚えとけ。」
私が握りしめた手を相澤さんはそっと掴んだ。
私に目線を合わせて、相澤さんは言った。
相澤「校長はお前を、お前たち家族を守ると約束した。だから安心しろ。俺たちヒーローは守れない約束はしない。」
目の前にいる人の、ただの他人の言葉がこんなにも心にストンと落ちたのは初めてだった。ジジイもこんな気持ちだったんだろうか。"救われる"という意味を私は初めて知った気がした。
初めてバーちゃんにあった日、助けてもらったんだと嬉しそうに話すジジイの顔が浮かんだ。
生まれて初めて"ヒーロー"がかっこいいと思った。
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作者名：楸 | 作成日時：2022年11月27日 0時
