NO.6 初めての雄英 ページ15
拝啓 ジジイ元気ですか。
ヒーローに連れていかれ転校して、初めての登校日。
桜が舞う季節でない事が悲しいです。
秋も暮れかけの木枯らしの中。
私ははじめて雄英高校の門をくぐりました。
テレビでしか見た事ない造りは実に感動的です。
でも、この造りと警備だと侵入は容易そうです。
ヒーローになる人間ですが、そんな事を考えてます。
私はこっちでも元気でやってます。
気にせずジジイは将棋を指しててください。
敬具
Aより
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そんなことを書いて私は個性でこの手紙を家に送った。
爪が少し剥がれたがそんなことは気にせず包帯を巻いた。
靴箱に私の名前が書いてあってちょっと面白かった。
多分誰も笑ってないと思うけど一人だけツボだった。
「〜で、昨日の小テストがさぁ。」
「昨日の数学が〜」
「今度のインターンが〜」
「知ってる？A組に転校生だって。」
そんな人々の声が聞こえてきた。
噂ばっかり信じて、物好きってどこに行ってもいるんだ。なんて思いながら私は職員室を探した。
けれど"盲点"だった。自分が場所を知らないことをすっかり忘れていた。個性を公共の場で使うと捕まるので私は考えあぐねていた。
その時、心地よいアルトの声が聞こえてきた。
「なぁ、あんた。なんか困ってんのか。」
貴「……助太刀求む、職員室はいずこか。」
紫髪のクマが多い人が私に声をかけてきた。
私は少し驚いて返事が遅れてしまった。テンポの悪い人間だ、コミュ障なのだから仕方がないとは思う。最近時代劇にハマっていたから咄嗟に古い言葉で反応してしまった。
「えーっと、ここ真っ直ぐ行って階段上がって左に……いや、やっぱ案内するわ。こっちだ。」
貴「
「……あぁ。」
こういう時、なにか話題を出すのが正解なのか。
私は本当に人と関わるのが下手なのてこういう時どうしていいのか分からない。話せる事なんて将棋の事しかないけど、今どきの若い子が将棋に興味があるとも思えない。
せっかくなので私は彼の事を聞くことにした。
貴「この学校広くて困ってたんだ、ありがと。名前聞いてもいいかな。」
「心操人使、1年C組だ。アンタは？」
貴「私は転校してきたんだ、1年A組のA。よろしく。」
心操くんはとても不思議そうな顔で私を見ていた。
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作者名：楸 | 作成日時：2022年11月27日 0時
