偽り夫婦【Kenshiro.K】 (ページ11)

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「賢志郎…さん…」

『さん？なんか壁あるな…』

「これが精一杯です…！」

『まあ、ええか。』

俺、にやけてるかも。人生で1番キモい顔してるかも。

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「美味しいです！」

「へえ…ご近所にこんな所あったんですね。」

「今はこれが流行りなんですね…」

「可愛い被り物。これにします。」

あれから、Aちゃんを色んな所に連れ回した。

芸人仲間で行く店とか、女の子の好きそうな雑貨屋さんとか、服屋さんとか。

俺の柄でもないけど、お忍びでテーマパークに行ったりして。変装のためにってお揃いの被り物とかして。

どれもこれも新鮮らしく、キョロキョロ見回しながら
俺に質問したり見たもの聞いたものに素直に反応して。

表情こそ大きく変わらないけど、時々見せるふわっとした笑顔に安堵したり。

箱入り娘ってこんな感じなんだって勝手に勉強になって
彼女への関わり方も少しずつ覚えていった。

俺、本気になってもうたんかな…

いつしか、今付き合ってる彼女よりAちゃんの事しか考えて無かった。