チューリップ【七五三掛】 (ページ25)

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「寒くない？」

『だいじょぶです』

イルカショー、もう少しで始まる。

「水かかっちゃうかな」

そう言って前髪を直す龍也さん。

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『わ、すご』

「おー…」

デジタルアートのきらきらとした世界の中を、イルカが飛びまわる。幻想的な世界。

想像以上の凄さに思わず何も言えない。

「ここね、如恵留にオススメされたんだ」

『如恵留さん？』

「彼女と一緒に来て、すっごい楽しかったからって」

如恵留さん、彼女居るんだ。

当たり前か。優しくて、頭も良くて、かっこよくて。

『如恵留さんの彼女さんって、すごい美人そう。何でも出来ますみたいな』

「はは、あーでも実際そうかも。ミスコン出てたらしいし」

「綺麗な子だよ」

きれい、。

龍也さんが他の女の人をそんな風に言うのが嫌だ。

そんな、まるで彼女みたいなことを思ってしまう。

「…どーしたの、」

今日は顔に出やすい日らしい。

一瞬迷ったけど、今日この場なら、わがままも許されると思ったから、

龍也さんの肩に静かにもたれかかった。

イルカのジャンプに歓声が上がる中、龍也さんが黙って私の手を握った。

絡めあった指が少し冷えてくる。

このまま眠りたい。