チューリップ【七五三掛】 (ページ24)

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「こっちこっち！」

気を利かせたつもりで早く来たのに、龍也さんの方が早かった。

『遅れてすみません』

「全然。まだ時間前だし」

行こっか、と手を差し出してくれる。

そっと伸ばすと、そのまま引っ張られてぐっと近くに。

「ふふ、ちょっと寒いね」

それどころじゃないです、私。

：

『すごい……』

「綺麗だねー！」

『はい、』

幻想的なクラゲの展示におもわず足を止める。

平日の夜ということもあって、館内には数名のカップルがちらほらとだけ。

「Aちゃん、イルカショー見る？」

『！、見たいです』

「イルカ好きなんだ？笑」

『え、…顔に出てますか？』

「うん、すごい嬉しそう笑」

7時半からだって、とまた手を引かれる。

案外積極的なんだ。

『ここ、お酒も飲めるんですね』

「ホントだ、なんか飲む？」

『じゃあ…アイスティーにしよっかな、龍也さんは』

「俺も同じの」

『いいんですか？お酒…』

「Aちゃんいるし」

『別に気にしなくても、』

「それに俺、酔ったら何しちゃうかわかんないし」

そう言ってカウンターに向かう。

あんな甘いお酒じゃ酔わないくせに。

知ってるんです、結構飲めることも、それ隠してることも、

私の前じゃ飲まないことも。

子供扱いされてるだけなのに、嫌な期待をしてしまう。

どうせ何にもしてくれないくせに。

「はい。冷たいよ」

『…いじわる』

「え？」