君の記憶から、私は消える。【太宰治】【文豪ストレイドッグス】

異能とは、呪いだ。 ページ3

いつも通りの朝だった。


いつもと同じ時間に起きて、いつもと同じ時間に家を出た。



スマフォの携帯画面には、彼からのメールや電話の通知。



『やあ、お早ようA。先に探偵社へ向かってるよ』



思わず彼が愛おしくなって、ふふ、と小さく笑った。


画面の上で指を滑らせ、返事を打つ。



『お早よう御座います。太宰さん。




覚えてますよ。』




此れが必ず行われる、朝のメールのやり取りだ。
心配性の彼は、いつもこうやって確認メールをくれる。




…この前寝坊して、慌てて家に来たっけ。


記憶が無くなったのかと思ったよ、と泣きついて来たのは流石に可愛らしかった。



電車に身を揺られ、小説を開く。



…あれ、此れって何でこうなったんだっけ。
小説のとある描写に疑問を抱いた。
可笑しい。仕方なく１ページだけ、パラリと戻る。


何かを忘れると云うのは、もう慣れた事だ。
アプリ機能を使い、日記を書く。其れが寝る前の私の作業。

ここ一週間の出来事をザッと読んだ。
一日一日の日記に必ず書いてあるのは彼の名前。



…太宰…治



決して忘れたくない愛しい人の名前を、心の中でソッと呟いた。

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