ラニ・ラマヌジャン 1 ページ4
ラニ・ラマヌジャン。
アルファベットなら、“Rani Ramanujan”。
本来なら、ハワイの言葉で天国、とか天使、とかいう意味の“Lani”の綴りで出生届けが提出される予定だった、らしい。それがどこかで──多分タイプミスだと思うけれど──私の名前は“Rani”、女王、王女、そんな意味の言葉になってしまった。インドの学校でそれをからかわれることはなかったものの、初見で驚いたような顔をする「保護者の皆様方」ならいた。インドのまあまあ良いカースト、というかかなり良いカースト層に生まれた私は、少なくとも表立っては何かを言われない。得なのか損なのかはわからないけれど。
そもそも何で私にそんな名前を付けようとしたの?と、一度だけ尋ねたことがある。日本に来て日本の学校に通い始めて、お家の人に名前の由来を聞いてみましょう、そんな宿題が出たときのことだ。
「わかるだろう?」
父も母も、その目尻に皺を作りながら諭すようにそう言った。今ならええ、わかりますとも。けれどそのときはわからなかった。結局私だけ宿題が提出できなかった。
両親がそれなりに年齢を重ねてから、やっとできた一人娘。日本的に言えば「親ばか」な名付け方。そういうことでしょう?
それくらいはわかる程度には、私は大きくなりました。
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作者名:桜野ユウ | 作成日時:2018年10月15日 22時