最終回 ページ17
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その夜。
二人は屋根の上に上がり、並んで座った。
『…まさか、こんな日が来るとは思わなかった』
「こんな日？」
『手脚の枷が外れて、身軽になって。
その跡も消えて。
それに私は眠るとき悪夢しか見なかったのに、丸二日寝てても幸せな夢しか見なかったの』
「…え？悪夢？」
首無にそのことを伝えていなかったAは焦ったように弁解した。
『…あ、いや、毎回あの男の夢ってわけじゃないし、朝起きて、毎回しんどくなってたわけじゃないし…！』
「でも、しんどくなってたときはあったんだな…？」
『う、うん、でも…』
首無は彼女の頬に手を滑らせ、そのまま頬をきゅっと摘んだ。
『…いひゃいよ』
「…ったく、ほんとに隠すのがうまいな…
悪夢見ても隠せないように今日から毎日、添い寝するぞ？ん？」
首無は冗談を言うように、彼女の顔を覗き込んだ。
『それ…冗談？』
「…？」
『冗談じゃなかったらいいなぁ…』
「…っ、
はぁー…お前、それ…
殺し文句」
首無は彼女を見つめた。
その瞳がだんだんと熱を帯びてくる。
少しずつ顔を近づけていった。
しかし…
『見て！首無！』
首無からのキスをちゃんと受け入れようとしていたはずなのに、視界に綺麗な光が入った瞬間、彼女は空を見上げた。
「はぁ、…おい、A…」
彼女に文句を言いたかった首無だったが、自分も空を見上げるとそんなことは忘れてしまった。
無数の流星が空から降り注ぐ。
街の明かりと空の明かり。
うっとりするほど幻想的だった。
首無は彼女の肩を抱き寄せ、彼女は首無の肩に頭を預けた。
「綺麗…だな」
『うん…とっても』
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作者名：怜。 | 作成日時：2020年8月13日 13時
