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部屋のドアを開け布団に倒れ込む。
あの後、天くんの脱落が決まって、各々が俯いたり涙を浮かべながら部屋へと戻っていった。
廉くんは部屋の隅で、溢れる涙を拭い続けている。
対照的に俺の目は驚く程に乾いていて、でも頭の中はぐちゃぐちゃで。
この感情を吐き出す方法は見つかることは無かった。
みんなが1つの部屋に集まり思い思いに天くんへ言葉を伝えた。
『…天、くん。』
消えそうなくらい小さな俺の声を聞き逃さずにハグしてくれる天くんの肩では溢れんばかりの涙は止まることを知らなかった。
「Aありがとね。」
「Aはすごいよ、かっこいいよ。」
『·····っ、ぅっ、』
『天、くんがいながったっ、ら、おれ、ここまでこれてないでずっ、』
『もっと、いっしょに音楽しだいっ、』
「…うん、俺も。」
天くんが荷物を持って日高さんとハグしている姿を見ると、もう居なくなってしまうという信じたくもない事実が突きつけられる。
俺の気持ちは天くんに届いたかな。なんて、そんなのは天くんのあの涙を見れば簡単に分かることだった。
「合宿第2審査、お疲れ様でした。」
日高さんが話し始めた頃にはもう、俯いている人なんていなかった。
残り1週間、寂しいなんて思っていられるほど時間はもう無くなってきている。
一度部屋に戻ると廉くんの姿は見当たらなかった。気持ちを切り替えるために頬を思いっきり叩くと、ちょうど窓から太陽の光が差し込んできて、まるで空が応援してくれているようだった。
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りこ(プロフ) - 続き待ってます!! (11月29日 23時) (レス) @page16 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayu | 作成日時:2022年11月19日 20時