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不可抗力 ページ42

結木を家に送り届け、そいつへの想いを自覚してしまって数日が経った。



あれから、アイツの働くすみれ屋にも、住んでいる道場にも顔を出していない。少し久しぶりだなと思いながらアイツの家へと足を運んだ。



・・・が、



「…またこんな所で寝てやがる」



今俺は結木の家にある稽古場にいた。探していた人物は入った瞬間すぐ見つけた。寝ているが。



だがそいつが寝ている場所に少し疑問が浮かんだ。



前も見た時のある光景で、その位置はその時とほとんど変わらない。



陽の光が当たる場所でもない、壁側でもない、中途半端な場所でそいつは寝ていたのだ。



そこに何か思い入れでもあるのかコイツ、と思いながら寝顔を覗く。



触ってみるとそいつの髪がするりと手に通る。起きる気配のなかったそいつは「ん、」と声を漏らす。



反射的に手を引っ込めた俺はその様子を見ていたが結木に起きる気配なし。



「…いい加減起きねぇと、襲うぞ」



いくらここには誰も来ないからと言って、女が家の鍵をかけず、適当な場所で寝るなんて。無防備すぎるというか、馬鹿すぎるというか。



「……俺ァ、言ったからな」



仮にコイツが起きてしまっても、寝ていたのが悪い。こんなの、不可抗力だ。



そいつの顔の横に肘をついた俺は、せめて、せめて今ある抵抗力を全力で出して、



チュッ、



頬に口付けた。

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作者名:みぃ太 | 作成日時:2018年4月8日 15時

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