お人好し ページ5
───・・・
「…これ、使って」
そう言って女は俺の目の前に救急箱を置いた。
「……」
「…なにその目」
「何とはこっちのセリフでィ、」
さっきまで敵意を向けていた女が、態度を変えたのだ。
いや、眉間にシワ寄せたままだから態度は変えていないだろうが。
……つーか、
「何でそんな離れた所にいるんでィ」
「ここが私の定位置」
女の座る場所は壁際。むしろもっと奥に行けないかとギューギューに壁へと張り付くような感じだ。
「……定位置にしちゃ窮屈そうだな」
「んなことない。極楽極楽」
そういう割にはキツそうだな。と思いながら女を観察する。
「な、なに」
女が俺の視線に戸惑う。
「み、見てないでそれ早く使えってば。止血程度には出来ると思うし」
「お前、お人好しか」
「いいから使えって」
女は人睨みするとすぐに目をそらした。
あ、こいつやっぱりお人好しか。不法侵入して来た男に世話焼くなんざ、とんだ人間だな。
……それにしても、
「……おい」
「!な、な、なに」
声がかなり震えているような。
俺が怪しいからか、
それとも血とかの類が苦手なのか、
……いや、なんか違う気がする。
「…普通に座ったらいいだろ」
「う、うるさい。指図するな」
……いや別にしてねぇけど。
自分から手当するように言ったクセに何をそんなに怯えてんだか。
「…なァ」
「今度は何!」
「普通こういうのって、お前が手当してやるんじゃねぇんですかィ」
「……は、い?」
俺の言葉にキョトンとした女。そして、顔を引き攣らせた。
「おっかしいなー。俺ァ無理矢理ここに連れてこられたってのに、手当くらい自分でやれだと。あー痛てーなー、手当してくんねぇかなー」
俺の言葉にピクピクと反応する女。そして、
「う、動くなよ、」
女はようやく、距離を縮めた。
あ、これはやっぱりお人好しだ。
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作者名:みぃ太 | 作成日時:2018年4月8日 15時