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距離 ページ23

女を口説く時のイケ女ンの笑みでも、引きつった笑いでもない。



女みてぇな顔でそいつは笑っていた。いやこいつ女だけど。



初めて俺に見せた表情に俺は少し驚いた。いつも眉間にシワ寄せて睨んでたクセに。俺に微笑みかけやがって。



だがそいつはすぐにまた目を逸らし、的あたりに散らばった矢の破片を拾い集めた。



「…ここに来たって、面白いことはないぞ」



「は?」



「私は、銀さんみたいなギャグセンスもないし、ツッコミが上手い訳でもない」



「何言ってんだお前」



「取り柄なんて弓くらい。……それほど、私はつまらない人間なんだよ」



静かにそう告げた赤谷はそのまま破片を拾い続けた。すると、



「…っ、痛った」



カラン、と矢尻が床に落ちた。その矢尻には少し血がついていて、



どうやら切ってしまったらしい。赤谷の右手には血が滲んでいた。



「アンタ、本当にドジだねェ、」



「……たまたまだ」



すると赤谷は壁側に置いてあったらしい救急箱を取りに来た。だがその歩みはすぐに止まる。



「…お、沖田。少し離れてもらえないか」



救急箱は丁度俺のすぐそばにあったのだ。



あー、そういうことね。俺が離れないと手当てできないと。



「どうしようかねェ、俺が手当てしてやろうか?」



「い、いい。自分でやる。そこをどけ」



「利き手怪我したんじゃやりにくいだろ。しょうがねぇな、俺がしてやるよ」



「だだだだ、だからいいって。って、なに構えてんだお前、」



俺はすでに救急箱を開けて手当ての道具を手に取っている。あとはこいつ次第で。



「今だけ、俺からは近付かねぇよ、」



「は、何言って、」



「テメェから来い」



じゃねぇと、この道場が血で汚れんぞ。と付け足して赤谷は「うっ」と声を出す。



初めて会った時、赤谷は道場を血で汚すことを嫌がっていた。その様子から本当らしいが。



「…ぜ、絶対動くなよ、」



この時、赤谷はゆっくりと一歩を踏み出した。








半径5mの距離が縮まった。

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作者名:みぃ太 | 作成日時:2018年4月8日 15時

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