安寧の地 ページ16
結木said
祭りが終わって翌日。
「結木ちゃん、これあそこのお客さんに運んでくれる?」
「はい、分かりました」
おばぁちゃんからおぼんに乗った団子を受け取り、それを運ぶ。
「お待ちどうしました、ゴマと黒蜜かけ団子です!」
「あら結木ちゃんが運んでくれるの?今日はツイてるわね」
「ホントね。じゃあついでにお茶もいただけるかしら?結木ちゃんの入れるお茶、とっても美味しいから」
「かしこまりました、奥様方。私が腕によりをかけて入れて来ますね」
運んだ品物をお客様に渡した。
こうして顔を出しに来てくれる女性のお客様はほとんど覚えている。女の子同士で来る若い娘達、娘・息子を連れて団子を買いに来る母、短い時間だけでも友人と語らいに来た奥様達。
接客をやっていると客の顔は覚えるものだ。たまに夫の愚痴を聞き、たまに彼氏の惚気話を聞く。男は正直どうでもいいが、居心地が悪い気はしなかった。
男が嫌いで苦手な自分にとって、こうして女同士で語らうのは気楽なもの。
今の現状に満足していたのだ。
──────・・・この前までは。
「あら結木ちゃん、茶葉入れすぎよ?」
「す、すみません、おばぁちゃん。ぼうっとしてて」
「珍しいわね。結木ちゃんがそんなふうになるなんて。どこか体調悪い?」
「いえ!ホントに自分がミスしただけなんで。あ、それも運んでおきますね!」
そう言って、湯呑みに淹れたての茶を注いだ。その様子を見たおばぁちゃんはお客様の方へ品物を届けに行った。
よかった、バレてない
少しの安堵を覚えて、先にある入口に目をやった。
あの悪魔はどうやら来ていないようだ。私はそう改めて確認すると安心の意を込めた息を吐く。
あの男に、自分の弱みを握られた。男が嫌いと言うのは本当。男が苦手と言うのも本当。だけど一番知られたくなかったのは後者の方だ。
男に弱みを握られた。そう考えるだけ背筋が凍りそうな勢いだ。
ここに来るとは限らないが、ようやく見つけた安寧の地をあの悪魔に潰されてたまるか。
悪魔というかもはやラスボスだ。
せっかく見つけた安寧の地を脅かそうというのなら、そう呼んでも誰も否定しないはず。
「バァちゃん、席空いてる?」
そして色々スキップしてラスボスは暖簾を潜って現れた。
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作者名:みぃ太 | 作成日時:2018年4月8日 15時