検索窓
今日:14 hit、昨日:1 hit、合計:41,960 hit

93話 ページ15

学校につく頃にはすっかり涙も止まり、ほぼいつも通りの自分に戻っていた。




なんて言うのはただの強がり。




昨日の私の

『付き合ってないよね』

という問いかけを、照れもせず焦りもせずあっさりと肯定したきーくんに私が勝手に傷ついてるだけ。




妹のようにしか見てない。


女として見られていない。






分かってはいたけど、それでも少しだけ期待してた。





他の女の子より距離は近いんじゃないかって。

もしかしたら。
ほんの少しだけでも可能性はあるんじゃないかって。




でも現実はそう甘くない。



そんな期待は見事に昨日打ち砕かれて、思い知らされる。



やっぱり私には無理だ。


あの人の隣にはもっと相応しい女の人がいる。







…慣れてるから、大丈夫。

いつも見てきてたから大丈夫。


毎日隣に立つ綺麗な女の人達を見てきてたから大丈夫。



昨日は動揺しかけてしまったけど、今日からまたいつも通り。



大丈夫

大丈夫。



そう思っていてもやっぱり、笑って歩く2人の姿が脳裏から離れない。



苦しい。

羨ましい。



私は、対象にさえ入らない。






「あーちゃん先輩、だめ。
無理してる。」





そう言った王子に肩を優しく叩かれたところで私はハッとした。


気づけば身体は強張っていて手に力も入ってる。


眉毛を下げて悲しそうな表情を浮かべる王子は、私の手をとって優しく包み込んでくれた。



きーくんとは違う、気持ちの休まる温かさ。



王子の温かさで、強張っていた身体も緊張が解れて気持ちも落ち着いてくる。





ああ、ダメだな私。


2歳も下の後輩に気を使わせてしまうなんて。








『もう平気。

元気でたよ。』



「無理はダメですよ。

僕がいつだって相談とか乗りますから。」



『うん…ありがとう。』



「待ってます。」




そう言って王子は嬉しそうに微笑んだ。


ぽん、と私の頭に優しく手を乗せて満足そうにする王子を見て私も自然と笑みが溢れる。



結局それから王子は1コマ目が始まる直前まで一緒にいてくれた。

94話→←92話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (57 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
154人がお気に入り
設定タグ:風が強く吹いている , 清瀬灰二 , 箱根駅伝   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

マナミ(プロフ) - 面白いです!主人公が灰二さんにベッタリとか好き!ユキ君達との仲の良さ、王子も相談に乗ったりで素敵!灰二さん、主人公の気持ちに…困ってる不安も気づくべき!ユキ君達も主人公に惹かれt((更新頑張って下さいね!無理はしないで下さいね… (2020年7月31日 2時) (レス) id: f5569c460a (このIDを非表示/違反報告)
采音(プロフ) - 続き気になります!ゆっくり更新していただけたらいいなぁって思っています! (2020年6月28日 7時) (レス) id: 93bfdfd3ea (このIDを非表示/違反報告)
りんね - とっても面白いです! (2020年3月18日 16時) (レス) id: 48ddc9040e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:藍緒(アオ) | 作成日時:2019年9月26日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。