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ヘルメットを持ち上げた瑞稀さんは、顔の汚れを拭うことも忘れるくらい驚いているようだった。
「...あの、」
「瑞稀さん!お疲れ様です!!」
何か言いかけた瑞稀さんを遮るようにAは話し続けた。
「いろいろお忙しいと思いますが...たまにはサークルに顔出して下さいね、じゃ、また!」
そう言うと、差し入れです!と缶コーヒーを投げ渡し、会釈をして歩き出した。
颯爽と歩くAを見ながら、猪狩がボソッと言う。
「アイツ、どんだけ脳天気なんだよ...こっちはどんだけ心配したことか。」
「だね...でもまぁ、Aちゃんらしいのかな...のりちゃん、どうしたの?」
龍我くんが森口さんを覗き込む。
「...ホント、ホントに、脳天気でトンチキで困ったヤツだけど...A、大好き!!」
「おわっ!!!」
森口さんは突然Aに飛びついた。
「典子!びっくりした!」
「ごめんごめん、久しぶりにAにくっつきたくなった!」
目の前でキャッキャ騒ぐ女子を、ぼんやり眺める野郎たち。
「...僕も仲間に入れて!」
今度は龍我くんが2人に飛びついた。
女子たちから黄色い歓声が上がる。
「うわ、龍我くんどうしたの!?」
「いやあまりにも2人が可愛すぎて...ごめん、迷惑だね。」
「全然!!龍我くん大歓迎!もっと可愛いって言って!」
「Aちゃんものりちゃんも可愛い!ねぇ、2人もおいでよ!」
龍我くんが俺と猪狩に声をかける。
「あ、結構でーす!いいです来なくて!」
「龍我くんだけで幸せでーす!」
龍我くんの腕の中、Aと森口さんが楽しそうに笑っている。
「2人とも調子いいねって...何してんの?」
気がつけば猪狩がクラウチングスタートの準備を始めていた。
「よーい、ドン!」
ダッシュで走っていった猪狩は、3人に突入する。
「うぉ!!痛い!猪狩なんで来るのよ!」
「うるせー散々迷惑かけやがって...これでもくらえ!」
森口さんの頭にアゴをグリグリしている。
「龍ちゃんも!」
龍我くんが俺を呼んだ。
「...しょうがないなぁ。」
俺はゆっくり歩いていき、ぽずっと輪に入った。
ぎゅうぎゅうに抱き合って騒ぐ俺たちを、周りの歩行者は確実に避けている。
「恥ずいな。」
「そうかな?」
俺の下で、Aが見上げて笑っている。
...神様、富士山、どちらでもいいです。
これからもずっと、Aが笑顔でいてくれますように。
あ、追加でお願いよろしいでしょうか?
俺はその笑顔をずっと見ていられますように。
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作者名:Momanao | 作成日時:2021年1月4日 1時