87*Ryuto ページ39
Aと一緒に店を飛び出し、駐車場へと走る。
「え、どこ行くの!?」
「いいから乗って!」
助手席にAを押し込むと、慌ててエンジンをかけた。
あとは...すっごく危ないんだけど、記憶がない。
Aも、何も話さなかった。
正直俺もAを気遣う余裕がなく、黙ってハンドルを握っていた。
どこをどう走ったのか...
「...ここは?」
「あ...」
辿り着いたのは、兄ちゃんとの練習コースで必ず立ち寄る場所。
日中は富士山が綺麗に見える。
だが、ただいま21時過ぎ。
とりあえず外に出てみるも...
「ごめん、真っ暗...」
「...ううん、ほら見て?」
Aが俺の隣に並んだ。
「今日は、満月ですね。」
「...そうですね。」
夜空を見るAの顔は、どこかすっきりしているようだった。
少し安心して、俺も満月を見る。
こんなにゆっくりと、月を見ることなんて最近なかったなぁ。
とにかく毎日忙しい。
勉強、サークル、バイト...
いつも何かに追われてて、何かに悩んでて。
ずっと気になってて、どうしてるのかって心配して...
毎日、いつもの生活をしているようで、でも頭の中はごちゃごちゃしてて。
いつも一緒にいる人がいなくなるということは、こんなに調子が狂うものなのか。
会いたかった。
会ったら、話したいことがたくさんあった。
...でも、いざ会ってみたら何も話せない。
森口さんの粋なはからいで、こうやって2人きりになっても何から話せばいいのかわからない。
ただ、Aの隣で月を見ている。
「...龍斗、」
「え、何?」
Aに突然話しかけられる。
「夜風が...泣き顔には痛すぎる。」
「あ、涙の塩分でヒリヒリしちゃってるんだね。」
「そうなのよ...それに典子がめちゃめちゃにファンデ塗ったから余計に。」
「森口さんも焦ってたんだよ...あ、そこの水道で顔洗う?」
「うん、そうする。」
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作者名:Momanao | 作成日時:2021年1月4日 1時