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「へ...げっ!!」
龍斗くんの顔が真っ白のっぺりになった。
我に返ったか。
「おい龍斗、この状況どうしてくれんだよ!」
橋本さんが龍斗くんに詰め寄る。
「あ、いや、えっと...」
「あぁ、壮行会してくれるなんて俺たち幸せだなって楽しみにしてたんだよ...なのにこんな仕打ち、悲しすぎるよ...」
「瑞稀さん...大丈夫ですか?」
わざとらしく嘆く瑞稀さんに、数人のサークルメンバーが声をかける。
「...心配かけてごめんね、ていうかみんなも騙されて来てんだよね?」
「え、あ...言われてみれば、」
「そうだ!おい1年、何やってくれてんだよ!」
「サークル丸ごと騙しやがって...ふざけんなよ!!」
「この落とし前、どうつけてくれんだよ!!」
血の気の多い先輩が立ち上がった。
「ちょっと落ち着いて下さい!」
「きちんと話聞いて下さい!」
猪狩と大光くんが止めようと前に立つ。
リホちゃんをカンナさんに託した大昇くんも加わる。
「お前らは引っ込んでろ!!」
「騒ぎを起こしたヤツに説明させろよ!!」
先輩たちの怒りは、後ろで突っ立っている2人に向けられる。
このままじゃ、修羅場に向けて一直線...
「龍斗くん、逃げて!!」
私は龍斗くんにAの手を握らせる。
「...え、いや、ダメだよそんなの、」
「ダメじゃない!ここは何とかするから!」
「でも、」
「もうこれ以上Aを苦しめたくないの!ここのことは私たちに任せて、Aのことは君に任せた!」
「...わかった、ありがとう。」
「へ、何!?」
龍斗くんは頷くと、ぼう然としているAの手を引っ張り店を飛び出した。
...健闘を、祈る。
開けっ放しのドアを閉め、振り向くと...
「わかりました...いい機会ですから、お互い腹割って話し合いましょう。」
先輩の前に立ちはだかっていたのは、厳しい目をした龍我くんだった。
「まずは瑞稀さん、」
「え、」
「事柄を整理していきたいので...Aちゃんと如月さんのことからお聞かせ願いませんか?」
「へ、あ、えっと...」
「どうしました?あ、素面では話しにくいですか?なら...」
龍我くんはカウンターに向かう。
「はい!岩本酒造の清酒です。これで思う存分酔って下さい...でもみんなが納得するようにきちんとお話し下さいね?」
瑞稀さんと橋本さんの前に、一升瓶をドンと置き座り込む。
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作者名:Momanao | 作成日時:2021年1月4日 1時