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「兄ちゃん降ろして！！だから行きたくないってば！！」
「北斗さんこっちです！」
暴れるAを黙って担ぎ下ろしてくれた北斗さんは、車の後部座席にAを押し込む。
「あ...」
運転席の龍斗くんと目が合う。
「Aが...妹がお世話になります。煮るなり焼くなり、好きにして下さい。」
「あ、はい...お預かり、します。」
「北斗さんありがとうございました、行って参ります。」
ドアを閉め、窓を開けて挨拶をする。
「うん...行ってこい。」
北斗さんはぶすっと座っているAの頭を、ポンポンと優しく叩いた。
「じゃ、よろしくお願いします！！」
そう私たちに言うと、車が見えなくなるまでいつまでも頭を下げてくれていた。
...北斗さんには、絶対に真実は言えない。
ミラー越しに、龍斗くんともう一度決心する。
「...もう、こんな格好、しかもすっぴん...」
「大丈夫アナタ素材がいいから。」
「ウソつくな！思ってもないこと言わないでよ！」
「あーあーうるさい！運転の邪魔！！」
「うわっ！！」
私はバッグの中から化粧ポーチを取り出しファンデーションをAの顔に塗りたくる。
「痛い！典子乱暴だから！！自分でやらせて！！」
「そう？じゃあご自由に。」
静かな車内、メイクが終わったAがポツリと言う。
「...どこ、連れていかれるの？」
「あ、居酒屋。」
「なんで？」
「今日はね、瑞稀さんたちのバンドの壮行会すんの。」
「え、そんなとこ行けるわけないじゃんか！！典子最悪！え、龍斗もグルなの？そんな酷いことどうしてするのよ...もう嫌だ...死ぬ...」
私たちに怒ったあと、Aは泣き始めた。
「うん、今のAには少し荒療治かもね。でも逃げないで現実に向かってみない？死ぬのはそれからでも遅くないし、大丈夫、その時は私が介錯してあげるから。」
「...酷すぎ。」
ボロボロ涙を落とすA。
「森口さん...超、辛口だよ。」
ハンドルを握った龍斗くんが、ボソッと呟いた。
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作者名：Momanao | 作成日時：2021年1月4日 1時
