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流されるまま、連れてこられたのは、駅前の公園。
「ちょっと待ってて!」
折れたヒールのまま、走って消えていった。
待つこと数分後、お待たせー!!と戻ってきた手には、パン屋さんの袋。
「はい、どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ここのパン、すごく美味しいのよ。どれも絶品だから、好きなの取って?」
「いや、俺はどれでも...」
「どれでも?うーん...じゃあ、これ!最初はやっぱりあんぱんでしょ。はい、どうぞ。」
にこっと笑って、あんぱんを差し出してくれる。
...大人の女性だと思っていたけど、笑うとちょっと、あどけなさが残る。
2人で芝生で並んで座り、パンを食べる。
横を見ると、目を細めて、空を見上げて味わっている。
...なんとも言えない、幸せそうな横顔。
特に会話もなくパンを食べ、"何となく君はこれ!"と渡されたりんごジュースを飲み、しばし満腹感に浸る。
...うん、眠い。
人間って、お腹いっぱいになると、なんでこうも眠たくなるかなぁ。
ましてや、俺、昨日寝てないからね...
気が付けば、芝生の上。
え、いったいどのくらい眠っちゃったんだろう。
あれ?
あの人は?
きょろきょろ辺りを見回していると、遠くで声がする。
見ると、噴水で子供たちと遊んでいた。
...無邪気すぎ。
あぁ、あんなに子供たちに水鉄砲、くらっている。
あ、本気で怒ってる?
くるくると表情が変わる。見ていて、飽きない。
しばらくぼんやりと彼女を見ていると、こちらに手を振り、戻ってきた。
「え...どうしたんですか?」
「やられた...最近の子供って、容赦ないね。」
全身ずぶ濡れで立っている。
「さあ、帰ろう!」
「え?その格好で、帰る?」
「まぁ、そのうち乾くでしょ(笑)。」
「ダメですよ!あ、じゃあ、せめてこれ着て帰って下さい。」
思わず着ていたパーカーを脱ぎ、差し出す。
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作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時