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「初めまして!相川真冬といいます!」
「一ノ瀬彼方です。よろしくね」
『日夜Aです』
「由樹めいです!」
例の飲み会当日。
知ってはいたけれど、面々はやはり男性しか居らず、唯一の女としてその場に居た。
「話には聞いてたけど、美人だねえ」
相川真冬と名乗る、透明で消えてしまいそうな雰囲気を纏う人は、私の事をじっと見詰めた後に花が咲く様な満面の笑みで言葉を発した。
「モテるでしょ」
此方も真っ白な肌に端正な顔。
一ノ瀬彼方と名乗った人は、相川さんの話に乗る様にして私に笑いかけた。
『…そんなでも無いです』
「へえ!稀に見る謙遜タイプのα?」
「まふ、言い方」
「あはは、ごめんね!」
「Aちゃんと、めいちゃんでいい?」
テンポの良いふたりの会話に、あっという間に置いてけぼりになる私。
一ノ瀬さんに突然話を振られためいはびく、と背筋を伸ばして目を見開いた。
あらきさんはにこにこしながらそんな私達の様子を見ている。
「ところで彼奴は?まーたどっか行ってんの」
「わはは、そらるさんここ来る時みなかったすか?」
「いや、見てないや。まふは?」
「えー?なるせくん?みてないけど」
年上方の話は上の空に、私は来なきゃ良かったかな、とか 正直時間の無駄かもな、とか そんな事ばかりを考えている。
そんな私のスマホがメッセージの受信をバイブ音で知らせた。
めい途中で抜けようか?
送り主は、隣に座る彼…めいだった。
ば、と横を見ると、誘ったのに申し訳ないとでも言いたげな顔で此方に視線を送っている。
Aうん
と一言だけ返事をして、私はスマホの画面を閉じた。
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作者名:弥雲 | 作成日時:2021年9月24日 11時