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「ねー、A。今度ね?イケメン集団の飲み会に誘われちゃった!」
私は授業のレジュメから視線を外さずに適当に返事をする。
めいの声色からはとても楽しみにしているであろう状態が窺えた。
「知ってる?イケメン集団ってね、みーんなαなんだって!あ、あらきさんも来るからみんなでは無いか〜。けどあらきさんだってαと同じだもんね!」
『…いつの間にそんなあらきさんと仲良くなってたの?』
「んはは、やっとこっち向いた。」
生徒たちが行き交う大きな通りに面したカフェの一角、そんな公共の場で誰にも見られないほうがおかしい。
めいはそんなことも気にする様子もなく、あたかも私しか見えていないとでもいうように私に笑みを向けて私の頭を撫でた。
『ちょっと、』
「恥ずかしがってるの?Aったら可愛いんだから!」
『そうじゃなくて、ここカフェ、』
周囲からの視線が痛いほど刺さるこの現状に耐え切れなくなり、目を逸らしてから言葉を紡ぐ。
「Aってさ、他人に興味ない割に他人の目を気にするよね」
『…え?』
優しい声色ではあるがあまりにも鋭いその言葉に思わず視線をめいに合わせる。
しかし、表情も視線も先ほどと変わらずに柔らかく、まるで空耳だったのではないかと疑うほどにこやかだった。
「それにAってあらきさんの話したらすーぐに食いつくもんね!めいちゃんの話は上の空なのに。…妬けちゃうなあ」
綺麗なのに、大きな棘が無数にある様な言葉と視線。
美しさに惑わされて迂闊に触れてしまえば怪我をしてしまう薔薇のような。
『めい、』
「あ、俺いい事思いついた!A、一緒にその飲み会行こ」
『…は?』
相手の考えてる事を理解するのはやっぱり難しい。
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作者名:弥雲 | 作成日時:2021年9月24日 11時