#その人、は ページ11
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Aside
総悟と別れた後は、重い足取りで私は”あの場所”へ向かっていた。
嫌だ嫌だと思いながら、重い鉛になったような足を一歩ずつ踏み出していく。
さっきの幸せを、返してほしい。
空を見上げると、雲一つない夜空が広がっている。
さっき見たほど沢山の星はなかったけれど、それでもやっぱり綺麗だ。
総悟のおかげで、今日は久しぶりに本当に笑うことができた。
神様、どうか……。
ゆっくり歩いたつもりだったが、嫌でもその場所にはついてしまう。
震える体を落ち着かせるように息を、ゆっくり吐いて吸う。
大丈夫。大丈夫。
”あの人”は、いない。
総悟…。
助けて…。
総悟の名前を心の中で呪文のように唱えながら、戸をゆっくりとあける。
「おい」
心臓が────
止まるっていうことは、きっとこういうことを言うんだろう。
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「お、お父さん…」
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震える声で、その人を呼ぶ。
その人…お父さんは、私がもう帰ってくることを予知していたかのように玄関に立っていた。
その顔は、暗くてよく見えない。
ガタガタと体が震えて、息が上手に吸えない。
頭の中でうるさいサイレンが鳴り響く。
逃げろ、逃げろ!
危険だ────
早く逃げろ───
「お、おとうさ…ご、ごめ、」
「いい子で留守番してろって…いったろうが!!!」
怒鳴られたかと思うと、頬に衝撃があった。
殴られた。
そう理解する間もなく、お腹、腕、頭。
「俺が出ているときは!!お前がこの家にいろっつったろうが!!!」
口の中に広がる鉄の味が、苦い。
途中からどこが殴られていて、
どこが痛いかなんてわからなかった。
ただ、
頭の中で、総悟の顔が消えなかった。
「次いなかったら許さねえぞ」
そうその人は私に言葉を投げかけると、出て行った。
「総悟…」
あの人が出て行った後の家はしんと静まり返っていた。
少し開いた戸からは、星がゆらゆらとゆれているように見えた。
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みゆう - 最高! (2016年1月31日 19時) (レス) id: 7a2227ce29 (このIDを非表示/違反報告)
ハナヤ(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます!これからも頑張りますね! (2015年10月12日 20時) (レス) id: 450f3666e5 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - 沖田さんがかっこいいです。私11歳なのに小説好きになりました。 (2015年10月11日 9時) (レス) id: a2dbaa1432 (このIDを非表示/違反報告)
ハナヤ(プロフ) - ニーナさん» すごく嬉しいです(/ω\)これからも頑張りますね*\(^o^)/* (2015年9月28日 13時) (レス) id: 450f3666e5 (このIDを非表示/違反報告)
ニーナ - 超超超〜おもしろいです!更新が待ち遠しいですっ (2015年9月28日 10時) (レス) id: b235c04110 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハナヤ x他1人 | 作成日時:2015年9月27日 1時