【忍たま】あこがれ 弐

観察 1 ページ26

朝、眠気を飛ばそうと井戸に顔を洗いに勘右衛門は向かった。
バシャバシャと水音がしている事から、既に先客がいることが容易に分かった。



勘「相変わらず早いなぁ、Aは。」

『あぁ、勘ちゃん。おはよう』



まだ朝晩は冷えるな、とか当たり障りのない会話をしていると微かに人の気配をいくつか感じた。
勘右衛門も気配を察知したようで、Aと同じ一点にちらりと目線を投げた。

中庭の井戸から離れた茂み。
その後ろに隠れるように身を潜めた萌葱色の頭が四つ。



勘「…あぁ、なるほどね。」

『…そういう時期か。』



ジャリッと庭の砂を踏みしめて茂みの方へ堂々と近付けば、分かりやすく動揺した四つの頭が揺れた。
本人達は忍んでいるつもり、小声のつもりかもしれないが、「気付かれた！」としっかり聞こえている。



『三年生諸君、朝から忍者らしくて結構なことだけど…気配は丸分かりだし、みんなで集まって隠れてちゃ意味ないよ？』

数「やっぱり、お気付きですよね…」

藤「隠れる予習を事前にするべきだって、あれほど言ったのに！」

作「そういう問題じゃねえだろっ！」



藤内と作兵衛が言い争い、宥める数馬、言い争いにさほど興味がない孫兵…。
ここで勘右衛門は違和感を憶えた。



勘「ん…？神崎と次屋は？」

作･藤･数「………あ。」

孫「あぁ…迷子縄、切れてますね。」



作兵衛の腰に巻きついている縄が途中で切れ、どうやら二人はいつもの如く迷子になってしまっていた。

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