長男は応えたい。 ページ6
風が吹く。
鳥は囀る。
狭霧山はいつも通りだった。
＿＿そう、俺が岩を斬れたこと以外は。
………そう、これは岩を斬った直後のことだ。
｢…炭治郎、最終選別に行く前に、一つだけしてほしいことがある。｣
たった今眼の前から消えたはずの錆兎の声が聞こえる。
｢最終選別に行く前に、姉さんに…狭霧山のとある杉の樹に会ってほしい。お前ならきっと、どれが姉さんか分かるはずだ。｣
姉さん、と錆兎は呼んでいた。
｢お姉ちゃんね、炭治郎のことずーっと見て応援してたんだよ。手伝ってあげなさいって言ったのもお姉ちゃんなんだ。｣
真菰も、お姉ちゃん、と慕っているようだった。
俺には2人の”姉”であろうその樹に心当たりがあった。
｢……こんにちは、錆兎と真菰のお姉さん…、杉の樹さん。｣
確証なんてなかった。
ただの俺の願望である可能性の方が大きかった。
＿あの時、励ましてくれた杉の樹なんじゃないか。
俺の背の何倍もある、俺の歳の何倍も生きてる樹を見上げる。
聞こえるのは穏やかにさわさわと葉を揺らす音のみ。
……否、その中に穏やかな少女の声が混じっている。
＿＿＿炭治郎少年、岩を斬れたんだね？
名を呼ばれ、思わず目を丸くする。
＿＿＿名前くらい分かるよ、君が来てからずっと見守ってるんだもん。
少し笑ったような声で少女は続けた。
＿＿＿炭治郎少年、君はたくさんの人に支えられてるんだ、…人じゃないけど、私も含み、ね？支えてくれた人のためにも、妹ちゃんのためにも、ちゃんと生きて帰ってくるんだよ？
応援してるね、と枝が揺れた、気がした。
ふわりと、優しい匂いが鼻を掠めた。
｢……っはい！行ってきます！｣
瞬間、俺の背中を押すように一際力強く風が吹く。
俺には、彼女の返事の代わりのように感じた。
＿＿＿＿…頑張れよ、長男。
＿＿＿長男は応えたい。
＿＿＿鱗滝さんの思いに、稽古をつけてくれた2人の思いに、
＿＿＿そして、名も正体も知らぬ不思議な樹の思いに。
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病空ナユ(ワイルドくん大好き)(プロフ) - 更新頑張ってください！...エボット山は？ (2020年12月5日 14時) (
レス) id: dcfdc7bef4 (このIDを非表示/違反報告)
リア - 面白くて思わず夜中なのに一気読みしてしまいました...これからも更新頑張ってくださいね！ (2020年11月4日 23時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 更新頑張ってください！！！ (2020年9月15日 0時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
63:927393(プロフ) - 更新再開有難う御座います！！！！待ってました！全然ゆっくりでいいので！待ってます！(？)更新頑張ってください、大好きです！！ (2020年6月30日 19時) (レス) id: 31c0c007b1 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - 初めて読ませて頂いた時にどハマり致しました！これからも沢山たっくさん！応援致しますので！ご無理をなさらずに更新頑張ってください！心から応援しています！ (2020年6月18日 1時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野菜炒め | 作成日時：2019年9月16日 22時
