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軛からの解放() ページ2

『おい、太宰?
 如何したんだよ』

『……見ない顔だねぇ、彼の()
 新入りかい?』

『あぁ、Aの事か。
 昨日来たばっかだ。
 首領を武装した敵の部隊から守ったんだと。
 相手を皆殺しにしてな』

『ほぅ……。
 そいつは面白い、ねぇ』









――こんな昔の事、今更思い返した所で何になる?
太宰は自嘲気味に嗤った。

と、太宰の思考は前方からの鈍い打音で消え去る。
太宰は其の音の主を見ると、悪戯っ子のようにニヤリ、と口角を上げた。
驚く程速い変わり身。
此れも太宰の異質な経歴が成し得たものなのだろう。
太宰は鼻歌でも歌うかのようにして其の人物に近付いた。

190センチはあろうかという長身を屈ませ、太宰を睨みつけている其の人物は――。

「やァ、国木田君」

「何が『やァ』だ此の阿呆!
 勝手に所内をうろつくわ、追い掛けて来たら来たでドアの鍵は閉まってるわ、
 如何いう心算だ!!」

太宰はガラス越しに聞こえる凄みの効いた声(多少くぐもってはいたが)をさらりと受け流す。

「たまたま閉まっちゃったんだ。
 ほら、開いた。
 それより国木田君、最近私の物真似の(クオリティ)に磨きがかかって来てるんじゃない?
 今の『やァ』なんて動き(ジェスチャア)までついて完璧だったよ」

「お前に褒められても微塵も嬉しくないわ!!」

太宰が鍵の外れた扉を開こうとするや否や、国木田は其れを彼ごと蹴り飛ばした。

「わっ」

太宰は転がった。

「もう、ひどいなぁ」

そして、腰のあたりをさすり乍ら立ち上がる。

「ハァ……。
 そろそろ観念してもらいたい所なんだが?」

「善処するよ」

溜め息を吐き、くたびれたように云った国木田とは対照的に、
太宰はケロリとした顔でウインクをしてみせた。


「……で、何か収穫はあったのか」

「うん。
 行方不明の方たちの哀れな姿を少々、ね」

淡々と話を続ける太宰だったが、国木田は其の内容に驚きを隠せない。

「おい、それって」

「もう然るべき処には伝えた。
 私達が出る幕じゃない。
 敦君達にも伝えてくれないかな、戻るって」

太宰はそう言い放つと、国木田と擦れ違うようにして階段へと歩いて行った。



国木田は太宰に背を向けたまま訊く。

「……どうやって話をしたんだ?

 どうやって、電波の来ていない(・・・・・・・・)此処で、外部と通信出来るんだ?」

其れと同時に、足音が消える。

国木田の頬を汗が流れ落ちた。

軛からの解放()→←幕間:或る物理学者の苦悩



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作品ジャンル:アニメ
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ゆん(プロフ) - 雰囲気がとても好みで素敵な作品と出逢えて嬉しいです( ˇωˇ )更新楽しみにしてるので、無理なく執筆していただけたらと思います…! (2017年12月9日 19時) (レス) id: 0cbe72cb46 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 呉 モヨ子さん» 呉さんのような方に云って頂くととても嬉しいです!有り難う御座います。お互い頑張っていきましょう!! (2017年11月12日 6時) (レス) id: bb7017a714 (このIDを非表示/違反報告)
呉 モヨ子 - お邪魔します。続編おめでとう御座います!これからも頑張って下さい! (2017年11月11日 7時) (レス) id: e69ac68703 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年11月11日 5時

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