音柱の継子 (ページ47)

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母親と妹と女3人で買い物をしているAはある雑貨屋で足を止めた。

「わぁ…！きらきらしてる〜！お母さん、お姉ちゃん、入ろう？」

「ふふっ、いいわよ」

「やったー！お姉ちゃんいこう！」

「わっ」

ゆり子に手を引っ張られ店の中へ入るA。海外から取り寄せたガラス細工の家具や小物が眩しいほどキラキラ輝いている景色にAは胸が躍る。

「これすごくかわいい…！お母さーん！」

妹はお気に召したものを見つけたのか母親のところへ交渉に向かった。
Aは色とりどりの皿を見ていた。特に欲しいものは無いが見ているだけでも華やかな気分になる。

そんな彼女の目に1枚の皿が目に止まった。

「？」

それを見た時胸がザワついた気がした。

それには花札にも使われている月とすすきの絵柄が使われていた。友達と花札で遊ぶことはよくあった。だがそれも数年前の話だ。

霧がかった記憶の向こう側、耳飾りだろうか。
音を立てて揺れている。

──なに、これ…。貴方は誰…？

ドクドクとなる胸を抑えるようにAは呼吸を繰り返す。

「お目が高いねぇ、お嬢ちゃん」

ハッとして隣を見ると店主の老婆が微笑んでいた。
自分と同じ藍鉄色の目に緑がかった黒髪にはところどころ白髪がみえる。

「あっ、あの…」

「それはねぇ、この世にひとつとしてないものだよ。作った人の最高傑作ってやつさね」

それを見る店主の目はどこか慈しむような目だった。

「え？……そんな素敵なものだったなんて…」

「皿なんてどれも皆同じに見えるだろう？だからみんなこんな老耄の話なんて聞かないのさ」

寂しそうに笑う老婆に

「そんなことないです…！私はこのお皿に、自分の人生をかけるくらい情熱を注いだんだっていう、そんな気持ちが伝わりました！…きっと、その人と同じくらいの心の持ち主を待ってるんだと思います」

店主の手を握り力説するAに

「……ははっ、そうかい、そうかい」

店主は涙を流した。