。 ページ19
「…昔ね、大事な友達に、伝えたことがあったの。それが瞬く間にクラス中に広まって、わざと傷を見せたり、傷つけられたり…」
そこまで答えたところで、しゃけに強く抱き締められ、続きを言うことができなかった。なんとか笑いながら話そうとするのに、両目から涙が溢れ出して止まらない。
「しゃけっ…」
「俺が一生大事にするから」
そこで全部が堪えきれなくなった。子供のように泣きじゃくった。泣いて、泣いて、ひたすら泣いて。喉が枯れきった頃に、ようやく涙は収まった。
「しゃけ、ごめん。ありがと…っ」
「…俺も、話してくれてありがとう。思い出させてごめん」
大きな男の子らしい手で撫でられるのが心地よく、思わず頭を擦り付ける。その仕草がお気に召したのか、満足そうにそのまま撫でられた。
「とりあえず、うちも刃物とか買い換えるかな」
「え、申し訳ないから大丈夫…」
「今後も使うなら安全なやつの方がいいだろ」
「それっ、て…」
長い将来一緒にいることを考えてくれているのかな、なんて考えてしまい顔が熱くなる。しゃけも同時に気づいたようで、2人して頬を真っ赤に染め上げた。
「…大事な、人なんだから…心配するのは当然だし、できることはしたいって思うだろ。普通」
「おもい…ます…」
「俺も怪我しないようにするから、リスクは減らしてこ、な？」
「…うん。うん、ありがとう！」
きゅ、としゃけに抱きつくと、一瞬腕が固まったのを感じた後、抱き締め返してくれた。しゃけの愛を、全身で感じることができて愛おしくなる。
「…幸せ。からかってくる人も、これ見よがしに見せつけてくる人もいないんだ」
「絶対しないし、させないから。そんなこと。なんかされたら俺に言えよ」
「ふふ。しゃけ私の騎士様みたい」
「なっ…ただの……こい、びとっ…だし…」
「照れてるー」
「あんまからかうな！」
けらけらとした笑い声が部屋に響いた。これが日常として続いていくことが、あまりにも幸せで、自分の頬をしゃけの方へと擦り寄せた。それに応じるように、しゃけも私の方へと頭を傾ける。
外傷恐怖症の私と、照れ屋だけど一途で思いやりにあふれる彼との、手探りで始める生活の話。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ピースラワー | 作成日時：2024年4月14日 19時
