ヒプマイ短編集5

弓道 【神宮寺寂雷】 ページ14

神宮寺寂雷




『あの、神宮寺先生はいらっしゃいますか？』



先生が夜勤で病院に泊まったため着替えやら何やらを届けに来た



｢神宮寺先生でしたら近隣の射場にいらっしゃいますよ。｣ﾆｺﾘ



『射場、ですか？』



受付の人の話を聞いて少しびっくりした



ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ…



『あ、寂雷さ…』



ﾋｭｯ…ﾀﾝ…



｢…ﾌｰ｣



そこには弓を引く寂雷さんの姿が



ｷﾘｷﾘと引いて放たれた弓は見事に的中する。



『すごい…』



｢…ん？おや。Aちゃん｣



弓道着を身にまといしっかりとまとめられている長い髪。その姿はとても美しかった。



『あ！すみません。…夜勤だったので着替えを持ってきました！』



｢あぁ。ありがとう｣ﾆｺｯ



＿＿＿『…先生って弓道やられるんですね。』



休憩中に射場の隅っこで話す



射場は広くよく風が通る



｢うん。たまにね。心が落ち着くから｣



爽やかなそよ風が髪の毛を煽る



｢学生時代から続けててね。夜勤の時は必ずやるんだ。｣



『そうなんですか。でも難しそうですよね〜』



｢やってみるかい？｣



『え！？いやいや、そんな私みたいな初心者が…』



｢大丈夫。私が教えてあげるから。ね？｣



そう言って微笑まれてしまっては断る理由もないので教えてもらうことに



｢そうそう、ここに手をかけて…｣



『は、はいっ(お、教えてもらうってこんな至近距離で！？)』



『(し、心臓がもたない)』



｢よし、打ってみようか｣



一緒に弓を引いてくれる



ﾋｭｯ…ﾀﾝ



全然違うところに命中した



｢凄いね！上手だよ｣ﾆｺｯ



そう言って褒めてくれる寂雷さん



『わぁ！！ありがとうございます！』天使ｽﾏｲﾙ



｢…弓道を続けていて良かったよ｣



『へ？』



｢君に教えることが出来たし、何より君の新たな一面が見れたようでとても嬉しいよ。｣ﾆｺｯ



『…っ〜』



そうやっていつもは変わらない頬の色を変えて笑う寂雷さん



『ずるいです寂雷さん…』



｢また一緒にやろうね｣ﾆｺｯ



凛とした姿で矢を射る彼でした

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