【ヒプマイ】指先の鼓動 (ページ8)

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#丁度いい言葉とはページ8

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｢で、用事はないんだな？｣

私の隣、運転席に座る眼鏡をかけたドライバーが私を横目で見ながらそう聞く。ありません、と答えれば胸元のポケットから煙草を取り出した。

さっきの視線も、煙草を吸う仕草も、この悪徳警官がやると下手に心臓が波打つからやめて欲しいところだ。

下手に整った顔立ちのせいか、ため息をついたり、眼鏡を外したり、ただそれだけで射抜かれる人が多いらしい。穂賀もそのひとりだ。

｢どこ向かってるんですか｣

もしやまたあのヤクザの…と思い冷や汗が浮かぶ。そんな私に、彼はふっと笑いながら言う。

｢左馬刻の所ではありませんよ。言ったでしょう、送っていくって。そもそもまだ仕事が残ってます｣

最初は苦笑混じりに。それも後半に行くにつれて笑顔が消えていく。

電話がかかってきた時は暇だとかそんなことを言ったけど、実際の所では、警察官の彼は常に忙しそうだ。

あの時も、仕事の合間を縫って電話をかけてきたんだろう。

どうしてそこまでして私と通話したいのかは知らないけど、もし本当に何か用があったなら、なんて考えて申し訳なくなった。

｢…着信拒否、解除したので｣

｢そうですか、それはよかった｣

では仕事が一段落したらまた電話します。彼がそういうとほぼ同時に車が止まる。私のマンションの前だった。

ありがとうございました、と一言告げて車を降りる。扉を閉めたあと、ちょっと考える。その間に走り出そうとする車に、慌てて窓ガラスを叩いた。

怪訝そうな顔をする彼を映す窓ガラスが下りてくる。頭を下げて中を覗き込み、

｢お仕事、頑張ってください｣

なんて言えばいいのかはわからない。人を励ます？ような言葉はあまり使わない。それに、彼に対してはいつも皮肉だったり、何気なく思ったことを口にして怒らせてばかりだ。

でも今日は、疲れたように仕事があると言う彼がいつもよりちょっと可哀想に見えたから。

｢…はい、ありがとうございます｣

驚いた彼の顔は、もしかしたら、初めて見たのかもしれない。

×××
イベント用の作文に名前と題名書かないで提出しました。怒られました。

追記:書こうと思ったのはそんな馬鹿な話じゃありませんでした。お気に入り50人超え、ランキング105位ありがとうございます。これからも精進しますのでよろしくお願いします。かっこいい言葉とか語句は知ってるのにいざとなると使えない私。文字書きは難しい。