そんな僕らの日常生活9

Initiation love 7 ページ7

side知念

美「侑李様…怒ってらっしゃいますか？」

車に乗ってから一言も話さない僕に対して美咲ちゃんが申し訳なさそうにそんな言葉を口にした。

悪いと思うならこんな事初めからしないでよと言い返してしまいたくなったが、会話もしたく無いので僕は無視をする事を決めた。

きっと涼介はショック受けてるよね。

まさかこんなバレ方をするなんて…

涼介と圭人が企画してくれた誕生日会には出られなくとも、婚約者の事は黙っているつもりだった。
おじいちゃんにはちゃんと僕の意思を伝えて、美咲ちゃんとのことは考え直してもらって、

それで…

涼介の所に戻ろうって思ってたのに…





『ワシは侑李の結婚式に出るまでは死ねないからな！』


今年の夏、大好きなおじいちゃんが体調を崩して入院をした。
今まで病気一つした事ない人だったからビックリしたけど、それからというもの口癖のようにそんな事を言うようになったのだ。

そして、昔から半分冗談としてしか聞いていなかった婚約者の事を持ちだされた。

『侑李は今、彼女いるのか？』

「彼女はいないよ…」

彼氏ならいるけどって答えたかったけれど、病床のおじいちゃんに向かってそんな事をいったらビックリしちゃうと思って…
嘘では無い答えを返した。

そうしたら…

『なら良かった。昔からお前の事を好いてくれている西園寺の孫娘の事は覚えているか？』

「美咲ちゃんのこと？」

『そうじゃ。小さい時から侑李の婚約者候補にと思っておったんじゃが、向こうも大層乗る気でのお。今年侑李も成人する事だし、婚約するのも良いだろうと思ってな』

「ちょっ、ちょっと待って、僕はそんな風に美咲ちゃんを見てないって！」

『ワシも老い先短いからな、早く侑李の結婚式が見たいんじゃよ。楽しみにしていたもう一人は当てにならんし…』

「おじいちゃん…」

そう言われて僕は何も言えなくなってしまった。

今思えば涼介の事をこの時にちゃんと話しておけば良かったって…

ズルズルと断りの返事をしなかった僕にも責任はある。
皮肉にもこんな事になってやっと決心がつくなんて…




覚悟はしてる。

僕が真実を告げる事で傷つく人がいる事。

ガッカリさせてしまう人がいる事。



でも…僕は涼介とずっと一緒にいたいから。

だからおじいちゃん、僕のワガママを許して。



そして、涼介…

僕のこと信じてて。

僕は…涼介以外とは絶対結婚なんてしないから。

Initiation love 8→←Initiation love 6

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す