舌先三寸は誤魔化す上で必要不可欠 ページ20
「実は…」
重々しく口を開いた彼女に、観音坂独歩はゴクリと生唾を飲み込み彼女が発する言葉一文字たりとも聞き逃すものかと、気迫が彼の背中を奮い立たせた。
チロリと彼の瞳を盗み見た彼女は決心した様に太腿の前で両の手を組みポツリと言葉を零す様に、されど滑らかに話し始めた。
「………実は、私
この会社に入社する前、他のところで二年ほど働かせて頂いてまして…。
営業課ではなかったのですが事務的な仕事を専らしておりました」
彼の顔から表情が抜け落ちた。
勿論、彼とて彼女から言われた言葉の意味を理解出来ていない訳ではなく、理解出来たからこその落胆を含めた表情でさえも、彼にとっては『無』に等しかったのだ。
「期待させてしまう様な間合いになってしまって申し訳ございません」
ペコリと頭を深々と下げた彼女を見て、自我を呼び戻した彼は、「後輩の頭を下げさせてしまった、これも俺の指導が悪いのか。やっぱり俺は…」等と見当違いな方向へと頭を悩ませていた。
…この時、頭を下げたAは冷や汗が背中をツゥーと流れていくのを感じつつも、何処か頼りげのない雰囲気を醸し出しながら、とても頼りになる彼を誤魔化せたのではないかという可能性に自画自賛を自身に繰り返し言い聞かせていた。
「あ、えっと…あの、前の職場では何を…？
あ！すみません、すみません！嫌な事だったら言わなくても良いです！あぁ、なんて俺は馬鹿なんだ。普通嫌だろ、二年で辞めた前の職場の話とか…。
俺は何で気遣いも出来なければ頭も回らないんだ…」
先輩である誤魔化せたと確信を持てた彼女は、ブツブツと息継ぎなしで呟かれる言葉を遮る様に顔を上げて、質問に応えた。
彼のネガティブな思考回路を遮断するには此方から、話し掛け意識を反らせる事だ。と今日一日の観察で学んだAは、フワリと表情筋を動かして大丈夫だと言う意思表示を顔で表しながら言葉を紡ぐ。
「大丈夫ですよ、前の職場では事務業を少し…。
その前は様々な業務を点々としておりました」
「…あれ、
そんなに早くから仕事を？」
にこやかに笑い応えた彼女に、観音坂独歩という人間は目敏く不可解な点を口に出した。
そして、真実を答えた彼女はまた、背中から冷や汗を流し、顔から血の気が引いていく様な気がした。
…彼女の口は少し詰めが甘いのだ。
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無自覚サイコパス(プロフ) - ひなたさん» 返信が大変遅れてしまい申し訳ございません!!これからもひなた様に喜んで貰えるよう日々精進させていただきます。コメント、本当にありがとうございます。 (2019年2月5日 23時) (
レス) id: d954a9a9d2 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 内容がすごく私好みでこういう小説が見たかったんで最高です…応援しております、、、！！ (2019年1月31日 1時) (レス) id: 0dee45b0bd (このIDを非表示/違反報告)
無自覚サイコパス(プロフ) - るいさん» そのように言って頂き、喜びで天にも登るような気持ちです。ありがとうございます!!頑張って更新して行きたいと思います。 (2019年1月27日 11時) (レス) id: d954a9a9d2 (このIDを非表示/違反報告)
るい - 面白いお話ですね！！ヒプマイ×何かのジャンルで一番好きです！！これからも応援んしてます！更新待ってますー (2019年1月26日 1時) (レス) id: a5de77afb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：無自覚サイコパス | 作成日時：2018年12月14日 19時
