十話『唐変木共』 ページ10
「おー、国木田君、ご苦労様!」
「独歩ー!ご苦労様だよー!」
国木田の登場に、二人は呑気に手を振った。
いやもうあの雰囲気でそんなに呑気にいられる辺り流石っす。表情読めないんすかと超云いたい。
国木田は二人の様子に肩をわなわなと震わせ、叫ぶ。
「苦労は凡てお前達の所為だ、このジサツ
ご心中お察し致します国木田さん。
然し彼等はそんな貴方の悲痛な叫びすらも聞き入れてはくれない鬼なのです。悪魔なのです。
ほら、太宰に至っては「彼に奢ってもらおう」なんて提案をしていますよ。
「聞けよ!」
ごもっともですがそれすらも聞き入れません彼等は。だって太宰さんは少年に名を聞いている最中なのですから。
「君、名前は?」
「中島……敦ですけど」
「敦!!いい名前だね!」
――――ここまで来ると国木田に同情してしまう。
平然と話を進めるこの二人は何なのだろう。何というか、非情だとか、腹黒だとか、非常識人とかいう言葉で片付けられそうに無い気がする。というか、終わらせては駄目だ。
「ついて来たまえ敦君。何が食べたい?」
と、太宰は既に国木田に奢らせる体で話を進めている。手招きしている。案内始めてる。
キャロルもそれに異論は無いらしい。本当にどうかしているぞ。
「はぁ……あの……茶漬けが食べたいです」
遠慮気味に云う敦。そして
敦の食べたいもの、それは『茶漬け』だった。
予想外過ぎるその答えに太宰は思わず笑い出す。なお、キャロルは話に飽きてアリスの写真を眺め始めていた。
「はっはっは!餓死寸前の少年が茶漬けを所望か!」
と、太宰は笑った。
文章上だと無感情に見えるが割と笑っている。
キャロルは最早興味すら示していないが。
「良いよ、国木田君に三十杯くらい奢らせよう」
「俺の金で勝手に太っ腹になるな太宰!」
自分の手を汚さずして事を進める下衆さ。流石である。
そして何度も見たであろう、またしても国木田を無視する太宰。
「太宰?」
敦が聞く。あれ、このまま進んでいいのだろうか。
「ああ、私の名だよ」
進んでいいらしい。太宰が答えた。
―――――太宰、太宰治だ。
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ヘルパー(プロフ) - 及川さん» ありがとうございます!私も正直何書いてるんだろうと思いつつ勢いのままに進めてます!w応援ありがとうございます!お応え出来るよう頑張ります! (2018年4月4日 15時) (レス) id: ee09beb631 (このIDを非表示/違反報告)
及川(プロフ) - 見たことのない書き方ですごい魅力的でした!!更新頑張ってください!影でひっそり見てますねw (2018年4月4日 15時) (レス) id: baff135399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヘルパー | 作成日時:2018年4月4日 12時