TYside ページ19
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Aちゃんとの自主練が始まって約半年後。
｢どうですか？｣
カメラで録画した僕達のダンスを見ていると、息を荒げるAちゃんが近づいてくる。
｢うん、凄く上手になってる。｣
｢やったー！｣
両腕を上に突き上げくるくる回る姿に、こっちまでも嬉しくなった。
｢テヨンさんのお陰で、今ダンスが凄く楽しいです！｣
柔らかい笑顔をする彼女に、心臓が跳ね上がった。
この胸の高鳴りを僕は知ってる。
そしてこの前のモヤモヤの正体も分かった。
ふわふわした空気の中、レッスン室の扉が開く音がした。
部屋に入ってきたのは僕の大親友のユタだった。
｢よっ！テヨン。｣
明るい笑顔を向け僕達に近寄ってくるユタ。
｢初めまして！キミがAちゃん？｣
｢はい！初めまして、中本 悠太さんですよね？｣
二人が楽しそうに話してる姿を見て、一人取り残された気分になった。
｢ズルいわー。二人だけで練習して。｣
｢宜しかったら、悠太さんも一緒にどうですか？｣
彼女の口から出た言葉に、胸がズキリと傷んだ。
そっか。
この時間が特別に感じたのは僕だけだったんだな。
そんな事を思ってしまった事が一番悲しかった。
彼女に勝手に期待したのは僕なのに傷ついて。
そんなふうに思ってしまう自分が嫌になる。
そもそもAちゃんは僕のダンスを好きになったわけで、僕自身を好きだとは言っていない。
恋って難しい。
それから数日後の現在。
彼女にはデビューが決まったことを告げずにいた。
レコーディングやらCDジャケットの撮影やらで、毎日フル活動だった。
Aちゃんに会いたい。
会って僕の口から伝えたい。
彼女は優しい人だから、自分の事かの様に喜んでくれるはず。
そして出来るなら告白を…。
いや、止めておこう。
上の人にバレたら叱られちゃう。
彼女やメンバーにも迷惑がかかっちゃうし。
いつまでこの気持ちを胸の奥に隠さなきゃいけないんだろう。
彼女は僕をどう思っているのかな。
毎日の忙しさに疲れが溜まると、Aちゃんを思い出すようになっていた。
あぁ、会いたい。
そしてこの気持ちは、告られる事無く胸の奥に閉まった。
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作者名：ゆうなす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/b115645c0f1/
作成日時：2022年9月29日 18時
