契約恋人__Kei.I (ページ14)

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車に乗っていても、伊野尾くんの家に帰っても、無言。

ていうより、私が無視していた。

慧「ごめん、嫌いだよね、俺のこと。」

私は、その言葉に頷くことは無かった。

慧「…もう、」

伊野尾くんはそう言うと、乱暴に私の服を脱がせた。

何をしたいのかよくわからない。

ドン、と大きなソファに押し倒される。

手首は抑えられたまま、私の顔に近づく。

「ねえ、伊野尾くん、」

そう言っても、顔は近づいてくるばかりで、よそを向いた。

伊野尾くんってやっぱり、私のことはただのペットレベルでしか思ってないんじゃないか。

こんなことをするために私を選んだんじゃないか。

なんだか、今まで少しでも変な感情を抱いていた自分に嫌気がさす。

慧「なんで、泣くの。」

「…っ…泣いてっ…ないっ…」

言葉とは反対に、目からは大粒の涙が流れる。

なんでだろう、なんで泣いてるんだろう。

悲しいことなんて、一つもない

なのに。

慧「…なんでいつも…そ、そうなるわけ。」

慧「そんなに、俺のこと嫌い？」

嫌い、なのかも

好き、なのかもわからない、

「…っん…」

慧「今日はこれでおしまい。ほんと、悪かった。」

どうやらこれで終わらせてくれるらしい。

けど、私の部屋を出て言った瞬間、静まりかえる空気。

前の優しい伊野尾くんがいたら、なんて思う。

優しくなんかないんだよ、伊野尾くんは。

あの性格悪いイケメンを優しい人だと錯覚していたのかもしれない。