検索窓
今日:25 hit、昨日:2 hit、合計:15,527 hit

察す ページ45

宇髄くんの部屋で目覚めることは何度も経験したので、
またか、くらいにしか感じなかった。

すぐ近くに宇髄くんがいたのはびっくりした。

ベッドのそばに座り、突っ伏すようにして寝ている。

見回すと、シンプルなはずだった部屋にはダンボールがごろごろ置かれていた。片付けでもしていたのだろうか。


 …いつもと違うなぁ。


このときに、私はもっと不思議に思うべきだった。

宇髄くんが疲れて眠っているうちなら、逃げ出すことも叶ったかもしれない。



『…宇髄くん』

「ん…あ、寝てた…」

愚かにも私はすぐに宇髄くんを起こしてしまう。
宇髄くんは目を何度か閉じて開くと、こちらをくるっと向いて笑う。


「おはよ」

『おはよう』

少し頭が痛くて、手で押さえる。

「大丈夫か?」

『うん…』

宇髄くんは思った以上に深刻な表情をする。

ただの頭痛だから、と話すと、疲れてるのかもな、と言われた。

「朝飯にするか」



宇髄くんの部屋でご飯を食べることも何度も経験したので、
卵が半熟だなあ、くらいにしか思わなかった。


「あ、半熟嫌なんだっけ」

『別にいいよ。どっちかといえば火を通してほしいだけで』

せっかくだから何か話した方がいい気がして、
少し気になったことを聞く。


『…片付けでもしてたの?』

「ん?」

『めっちゃダンボールあったし。どうしたの?』

宇髄くんは、あー、と間延びした声を発するだけだったが、


「あれの中、改めといてな」


『え、私が?』

プレゼントかな、なんて考えた私は相当呑気だろう。

「俺の方じゃ判断できねぇから、全部持ってきてもらったけど
いらないもんとかこれを機に断捨離しとけばいいだろ」

あまりにもつらつらと言うものだから、
少しおかしいなと思う。

それに、目を合わせてくれない。


目玉焼きの黄身に箸を入れる。
どろりと、鮮やかな黄色が溶け出して皿を侵蝕する。

『…あれ、私のものってこと?』

「あぁ」


俺の方じゃ判断できない。これを機に。全部私のもの。

箸を落とす。


宇髄くんの顔を見ることができない。


黄色く染まった皿をしばらく眺めていた。


それから、立ち上がって玄関へ向かう。
ドアノブを取る勢いで動かす。開かない。当たり前だ。


「もう遅えよ」

笑い混じりの声が、すぐそこに聞こえる。


そう、遅いのだ。

取乱す→←モノローグ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
46人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。