察す ページ45
宇髄くんの部屋で目覚めることは何度も経験したので、
またか、くらいにしか感じなかった。
すぐ近くに宇髄くんがいたのはびっくりした。
ベッドのそばに座り、突っ伏すようにして寝ている。
見回すと、シンプルなはずだった部屋にはダンボールがごろごろ置かれていた。片付けでもしていたのだろうか。
…いつもと違うなぁ。
このときに、私はもっと不思議に思うべきだった。
宇髄くんが疲れて眠っているうちなら、逃げ出すことも叶ったかもしれない。
『…宇髄くん』
「ん…あ、寝てた…」
愚かにも私はすぐに宇髄くんを起こしてしまう。
宇髄くんは目を何度か閉じて開くと、こちらをくるっと向いて笑う。
「おはよ」
『おはよう』
少し頭が痛くて、手で押さえる。
「大丈夫か?」
『うん…』
宇髄くんは思った以上に深刻な表情をする。
ただの頭痛だから、と話すと、疲れてるのかもな、と言われた。
「朝飯にするか」
宇髄くんの部屋でご飯を食べることも何度も経験したので、
卵が半熟だなあ、くらいにしか思わなかった。
「あ、半熟嫌なんだっけ」
『別にいいよ。どっちかといえば火を通してほしいだけで』
せっかくだから何か話した方がいい気がして、
少し気になったことを聞く。
『…片付けでもしてたの?』
「ん?」
『めっちゃダンボールあったし。どうしたの?』
宇髄くんは、あー、と間延びした声を発するだけだったが、
「あれの中、改めといてな」
『え、私が?』
プレゼントかな、なんて考えた私は相当呑気だろう。
「俺の方じゃ判断できねぇから、全部持ってきてもらったけど
いらないもんとかこれを機に断捨離しとけばいいだろ」
あまりにもつらつらと言うものだから、
少しおかしいなと思う。
それに、目を合わせてくれない。
目玉焼きの黄身に箸を入れる。
どろりと、鮮やかな黄色が溶け出して皿を侵蝕する。
『…あれ、私のものってこと?』
「あぁ」
俺の方じゃ判断できない。これを機に。全部私のもの。
箸を落とす。
宇髄くんの顔を見ることができない。
黄色く染まった皿をしばらく眺めていた。
それから、立ち上がって玄関へ向かう。
ドアノブを取る勢いで動かす。開かない。当たり前だ。
「もう遅えよ」
笑い混じりの声が、すぐそこに聞こえる。
そう、遅いのだ。
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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)
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