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取乱す ページ46

体に力が入らない。

何かを掴もうとして、哀れに手は空を切る。

そのまま崩れ落ちる。
自分の不規則な息の音がよく聞こえる。

頭痛がする。さっきより強い。

なんで、なんで私は。なんで宇髄くんは。


長い腕が伸びてきて、私を抱き上げる。

体はすっかり硬直している。

やっと見上げた宇髄くんは、いつも通り笑っていた。
目が合うと嬉しそうだった。


「ごめんな」


優しく語りかける声が怖い。
そのまま部屋のベッドに座らされる。

壁に背をぴったりとつけ、膝を抱える。

あからさまに怯える私を、宇髄くんは安心させるように撫でた。

「落ち着いてからでいいから、ちょっとずつ整理しような。
この部屋は自由に使ってくれていいぜ」


ずっと考えてたんだ、と嬉しそうに続ける。

「やっぱりこの部屋がいちばん良いかなって。
日当たりもいいしな、ここの扉からすぐトイレ行けるし。便利だろ?」

私に、いちばん良いってことみたい。

「こんな小さな住まいで申し訳ねぇけど、悪くなさそうだよな」

返事ができない。
荒く呼吸を繰り返す私の姿なんて、見えていないようだった。


「しばらくは大変だろうし、Aは仕事休んどこうな」

え、と声が出る。

「無理しなくていいから。俺が上手くやっとく」

駄目だ、これ以上宇髄くんの思い通りにさせられない。

そう思っても、喉の奥が張り付いてまともに話せない。


「ただ、その間この部屋からは出ないようにな。
万が一通報とかされたら困るし」


悲鳴をあげたくなる。
通報されるようなことをしている自覚はしっかりあるわけだ。

「色々不便がないように用意しとくけど、何かあったら言ってな。
くれぐれも一人で無茶すんなよ」

余計なことはするなってことだ。


頭がぐちゃぐちゃだった。

少しでも宇髄くんに心を許した私が馬鹿だったのか、
それとも私に付け込んだ宇髄くんが悪いのか、

諦めるべきなのか、足掻くべきなのか、

それから、これはいったい何の意味があるのか。


聞きたいことはたくさんあったけれど、何一つとして言葉にできない。
鳴き声のような、意味不明な発声を繰り返すだけだった。


「落ち着け、水飲むか?」

この期に及んで心配そうにする真意が分からない。


『わ、私…は』

やっと声になった声は裏返る。

『ここ、に、いたくない。宇髄く、怖いっ…』


よりによってなんて正直なことを言ってしまったのだろう。

歪んだ→←察す



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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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