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潰れる ページ36

狐につままれた気分だった。

なんで私はまた、各駅停車の電車に揺られているのか分からなかった。

それに、今は勤務時間中。立派なサボりだ。

こっそり抜け出してきた。
休み時間だから、何も咎められなかった。


『…』

「…」

隣の宇髄くんは、落ち着いているようにも緊張しているようにも見えた。


私は、また繰り返してしまうんだろうか。
目の前の景色がぐにゃりと形を変えるような錯覚に陥る。

終点まであと3駅。






「…実はさ」

宇髄くんはぽつりと言った。

終点駅の海は、さほど変わっていなかった。
あれから数年、ここだけは時間が経っていないのかもしれない。

「何も言うこと決まってなくて」

申し訳なさそうに言うから、心は少し軽くなる。

「でも、何も言わないよりいいよな」


どきりとする。

今更何を言うつもりなんだろう。

「ずっと言葉足らずだったよな。
それだけじゃなかったのかもしれないけど」


私は、まだ言葉が出ない。


「勝算ゼロだと思うけど、言ってもいいか?」

『…いいよ』


宇髄くんは一瞬黙り込んで、
沈黙を笑い飛ばして言った。


「やり直してほしい」

『ごめん、無理』

「派手に返事が早ぇな」

全部見透かしていたみたいな反応だ。

けど、宇髄くんを支えている何かが揺らいだ。
そんな感じがした。


「振られるのとか初めてかもな。まぁ、これで踏ん切り付くわ」

まるで私が縛り付けていたような言い方だ。

これで、終わりかな。
言いたいこと、もっとなかったっけ。

駄目だ、自分から終わらせたのに。


「…泣くなよ」

『ごめん』

「そんな顔されたら、まだ期待しちまうだろ」


我ながら汚い涙だと思う。

私は私なりに、宇髄くんのことが本気で好きで。
自分だけ本気なのが嫌で何も言えなかった。

なのに、彼が本気だと分かった途端に繋ぎ止めようとしている。

気づけずに無視してきたのは私なのに。

私に宇髄くんを好きになる資格はない。


けれど体は浅ましく涙を流し続ける。


「…怒らないでくれよ」

私は宇髄くんの腕の中に収まっている。
胸が強く締め付けられて、嗚咽が漏れる。


いっそこのまま潰れてしまえば楽なのに。

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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