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誤る ページ33

宇髄くんにとっては、遊びだったんでしょ。


ずっとそう思っていた。

抱きしめられても、キスされても。
どれほど優しくしてくれたって、それは決して愛じゃないんだと。

だって、一度も好きだなんて言ってくれなかったから。

いつでも落ち着いていたし、
照れていたのも緊張していたのも演技だったんだろう。

なんで私だったのかは、分からないけれど。


それから、こっそり逃げた。

高校を卒業して間もなく。
デートの約束をすっぽかして、何も言わずに遠い街に行った。

ずっと前から考えていたから困ることはなかった。

宇髄くんから何度も連絡が来たが無視した。

両親には、私が無事だということ以外は何も伝えないでと言っておいた。

それなのに、なんの因果か再会を果たしてしまうのだから恨めしい。
また宇髄くんは私で遊ぶ気なんだろうと思っていた。



「は?」

宇髄くんは鳩が豆鉄砲を食らったように固まった。

『え』

思っていた反応と違う。

「遊びって」

『遊びだったんでしょ?』

そうであってほしいというような言い方になっている。


「…そんなわけねぇだろ」

驚いた。
あまりの低い声に体の芯が震える。


「ずっと探してたよ、忘れられなかった。
また会えたから、もう離したくなくて執着した」

囁くように語りながら、宇髄くんは息がかかるほどの距離まで近づく。


「それでも、遊びだと思うか?」


冷たい汗が肌を伝う。


この目は、あの時の彼と同じだ。
私を襲おうとした、昔の恋人と。

何かに取り憑かれたようにぼやけて、熱を持っている。


狂わされていたのは私だったはずだったのに。

私も、宇髄くんを狂わせていたの?

『なんで…』

ようやく弱々しい声を出したところで、宇髄くんは我に帰った。

そして、すぐに私から距離を取った。

「悪い…冷静じゃなかった」

『いや、うん…』


そのまま宇髄くんは居心地を悪くしたのか家を出て行った。

私は、とんでもなく酷いことを言ってしまったのかもしれない。

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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