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狂う ページ17

「家帰れそうにねぇんだわ」

『そんなこと言われても…』

「いいじゃない、泊まっていきなさいよ」

「娘の彼氏だからな、いいだろう」


どうして帰れそうにないのかとか、
明日はどうするのかとか、
聞くことはたくさんあるだろうに、両親は簡単に宇髄くんを受け入れた。

どうして娘の彼氏だったらいいのかも分からない。

「ありがとうございまーす!」

二枚目俳優のような笑顔で家に上がり込んでくる彼を見ていると何も問う気は起きなかった。

私だって、嬉しかった。


「ごめんな、急で」

『大丈夫だよー』

むしろ一緒にいられて嬉しい、と言う代わりに
私は精一杯の笑顔で答えた。

『そろそろ寝るよね』

「ん。じゃあ…」

と、床に寝転がろうとする宇髄くん。

『え、床は、硬いよ。体痛めるよ』

「…いや、いいって。転がり込んでる分際で」

わざわざ彼女の家に泊まって、別々に寝るなんて。
誰だって、私の立場だったらそう思うだろう。

もちろん口には出せないけど、

『私は、迷惑とかじゃないから…だから、』

二人で寝るには明らかに小さいベッドに目をやる。

それで察しないくらい、宇髄くんも馬鹿じゃない。
というか、私が言い出すのを待っているんだろう。


「…本当に可愛い」

熱くなった頬に触れられれば、もうそれで充分だった。
キスから始めて、お互いの香りを擦り付け合う。

私は全く経験がなかったけど、宇髄くんは慣れたようだった。

体から溢れそうなほどに甘い吐息で満たしてくれた。

それが今になって毒のように体を内側から蝕んでいく。
そんな錯覚を覚える。


あの時の私は、馬鹿で考え知らずで。でもそれも許されたんだ、子供だから。

『…大人になんてなりたくなかった』

私がいつ大人になったかと言われれば、
それは間違いなく宇髄くんから離れたときだろう。



ーーーーー

『っくし、あー…冷えるな』

普通に夜道は怖い。つーか心細い。
でもAの圧が怖くてそそくさと出てきてしまった。

あいつが怖いとか、生まれてこの方一度も思ったことがないが。

…違うよな。

嫌われるのが、怖いんだよな。


あいつは俺を切り捨てられない。
どんなろくでもない奴にも、良いところが少しはある。
そんなことを思っているんじゃなかろうか。

それにしたって、いつ愛想を尽かされるか分からない。

せっかくまた会えたのに。
…やっぱり、未練がましいかな、俺。

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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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