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逃げる ページ29

「そんな死にそうな顔しないでよ」


Aは大きくため息をついた。

昨日の一件があってから、学校に来るかためらったが、ここで休んだら逃げたようなものだし重たい気持ちのままで出勤した。

来るなりAに会って本気で死を覚悟した。

それからのこの一言だ。


『お前も死にそうじゃねぇの』

気づけば言葉を返している。

目の下の隈が心配だ。
俺のせいで眠れなかったと思うと、申し訳ないし少し嬉しい。

まだまだ邪念は払えていないようだ。

『昨日は、悪かった』

「うん…もういいよ」

思い出したくもないだろう。
胸に刺さった太い棘が動いて、心臓を抉ってくる感覚がする。





ーーーーーー

七時に上がって帰路につく。

元彼との食事のためだ。
わざわざ仕事を早く終えてまで行くのも癪だけれど。

『はぁ…』

不安だ。なんだかとても嫌な予感がする。

付き合ってた時は、優しい人だったけれど
今はなんだか雰囲気が違う。
少なくともあんなに食い下がってこなかったはずなのに。



『お待たせ』

「あぁうん、俺も今来たばっかりだから」

私を見ると彼は嬉しそうに笑った。

行こう、と手を繋がれる。
強引さは宇髄くんに似てもいた。






普通の食事だったけれど、案の定帰してはもらえなかった。

「今日も、いやいやだっただろ?もう今が最後かもしれない」

『…』

確かに、最後にするつもりで来た。

「確かに最後かもしれないな。一生帰さないから」

『…!』

彼が口の端を吊り上げる。

『なん、で』

「まだ好きだから」

『私は…っ』

声が震える。足が震える。
いつからこれほど執着されていたのだろう。

踵を返して走る。

パンプスを脱ぎ捨てたいくらいだ。

「君じゃ俺をまけない」

その通りだ、全く走れないし、息は切れるし
気づけば人気のない路地道にいるし。

こんな絶望があるだろうか。

腕を掴まれる。捻られて、悲鳴を上げる。

嫌だ。助けて。
宇髄くん。



『っう…!』

と、腕を掴まれていた感覚が消えて私は前に倒れ込む。
慌てて振り向くと、元彼は倒れていた。

そして…


『あ…』

助ける→←悔やむ



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いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

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