検索窓
今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:15,603 hit

奪う ページ27

『…分かった。いいよ』

「マジ?やった!」

元恋人の誘いがしつこすぎて、ついに誘いに応じてしまった。
食事だけだし、これで連絡が減ればいいと考えてのことだった。

『じゃあ、明日の8時に駅前ね。はーい…』

めっちゃ喜んでたなあ…

一抹の不安が拭いきれない。


「デートか?」

『ぎゃ』

宇髄くん、いきなり覗いてこないでよ。心臓止まったらどうするの。

『ん…まぁそんなところです』

考えた。
これで彼氏いるってことにしたら宇髄くんのことも割り切れるんじゃないかって。

いや、私は割り切れてるけどね。

「お前はフリーだと思ってたんだけどな?」

『私にだって彼氏くらいいます』

ちくっと胸が痛むのは、きっと嘘をつく罪悪感だ。
しかし宇髄くんは綺麗な顔を歪めた。

「もっとマシな嘘つけよ」

『嘘じゃないです』

簡単に見透かされて癪なので、言い返す。

「お前の嘘くらい分かるから。それに、彼氏とかできたら流石に気づく」

気づかれてたまるか。

宇髄くんは言葉を並べる。

「全然男っ気ねぇし。お前はさ、そういうことがあったら髪も整えるし服も明るくなるし、もっとにこにこしてただろ。
デートの約束取り付けたら派手に喜んでたじゃねえか」

『いつの話してるんですか』

高校時代のことを引き合いに出されても。


「お前の方が、分かってない。
お前は思ってる以上に、変われてない」

『っ…』


どうしてそんなことを言われなきゃいけないの。
私は、変わりたいし忘れたいのに。


「なぁ、誰なんだよその男」

『えっ、と』

「言えねぇよな」


長い腕が伸びてきたと思えば、壁に押し付けられている。

突然のことに抵抗のひとつもできなかった。

『どうして宇髄くんに、そんなこと教えなきゃいけないわけ』

落ち着いた様子でこちらを見下ろす紅い目は
落ち着きがないようにも見える。

「推察するに、望むような相手でもねぇだろ。
やめといたら?」

『…ほっといてよ』

ぎり、と手の力が強まる。
壁に強く押さえつけられて小さく悲鳴が溢れる。


怖い。


涙が滲んだ。

『気まぐれで構わないでよ。心配したふりばっかり…』


言葉が続けられない。


唇が重なっている。


…え。


しっかりとくっついたそれは、すぐ名残惜しそうに離れた。
隙間から熱い息が漏れる。

「あ…いや、その」

『…っ、馬鹿!』

宇髄くんを突き飛ばして教室を後にした。

悔やむ→←毒吐く



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
46人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いのり(プロフ) - ゆんさん» 気に入っていただけたようで嬉しいですっっ( ; ; )応援ありがとうございます、頑張ります!! (2022年2月10日 15時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん(プロフ) - めっちゃ好きです、この歪んだ宇髄さん……前から拝読しておりましたが、好みすぎてコメントしちゃいました(笑)これからも無理のない範囲で更新頑張ってください♪楽しみにしています😌 (2022年2月8日 7時) (レス) id: 45bbc3e57c (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - *カスミソウ*さん» ありがとうございます♪ここからも拗れまくります!ぜひお付き合いくださいー!! (2022年2月2日 6時) (レス) id: 13648d0b87 (このIDを非表示/違反報告)
*カスミソウ*(プロフ) - 読ませていただきました!なんともいえない2人の関係にきゅんとしながら見ております!とっても面白かったです!次の更新も楽しみにしております(*^^*) (2022年1月29日 11時) (レス) @page34 id: b38fa73fcf (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - まっひーさん» かっこいいの分かります(*´꒳`*)コメントありがとうございます! (2021年12月26日 12時) (レス) id: 14af0b5718 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年8月31日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。