冨岡さん、人違いです！【鬼滅の刃】

寂しい ページ35

『ん…』

白を基調とした病室の中にいた。
…そういえば、入院することになったのか。

「あ、」

『…善逸？』

「A！目が覚めたんだね！よかった…」

見慣れた顔があって安心する。

『来てくれたんだ…いたた』

「だ、大丈夫？飲み物とか、いる？動かなくていいから」

『うん、ありがとう』

目の前には私の足がぐるぐる巻きになって吊られていた。
体は少し動かしただけで痛い。

『…冨岡さんは？』

「今さっき帰っちゃった…明日も来るって」

『そっか』

こうして普通に話ができることが嬉しかった。

…死ぬところだったんだ。

「A！？なんで泣いてんの？痛いの！？」

『ううん…生きてて良かった…』

善逸がハンカチで涙を拭いてくれた。
2回も泣かれちゃたまんないよ、と言って。

『…あの時、金縛りにあったみたいに動けなかった。
もう諦めてた』

本当に体が動かなくなるものなんだな。

『でも、冨岡さんが必死に来てくれたから…
今死んだら、後腐れするなぁって』

「後腐れって」

善逸がちょっと笑う。

『だから逃げた。そしたら助かった』

それでも大怪我だけど、死んでしまうのとはわけが違う。

「…護れてんじゃん」

『なんて？』

「ううん…そのこと、冨岡さんにも言ってあげなよ」

『うん』

そっか、もしかしたら負い目を感じてるかもしれないし。
教えてあげよう、冨岡さんが救ってくれたって。

「…目が覚めた時、冨岡さんに居てほしかった？」

『別にそんなことないけど…』

「Aはさ、寂しいんでしょ」

『寂しく、ないよ』

答えながら思い返す。
最近何度も寂しいと思った。

『…やっぱり、分からない』

ずっとついてくる人がいるから、隣に誰かがいることに慣れてしまったんだ。だから、一人が余計に寂しいんだろう。

それに、

『私と冨岡さんは、別に特別でもなんでもないんだって思ったら…悲しかった』

自分で言って、はっとした。
なんで特別じゃなきゃ駄目なんだろう。

「ずっと誰かと一緒に居るってさ、なかなかできないよ」

『…』

「それってもう、結構特別じゃない？」

冨岡さんの隣は居心地がいい。
落ち着く声で、言葉数は少ないけれど実直に話してくれる。

無表情の隙間に、素直な表情を見せてくれる。

離れたくないと思ってる。

『私…私は、』

近すぎて、気づけなかった。


『冨岡さんが、好きなんだ…』

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