うちの兄貴と居候【煉獄杏寿郎】【宇髄天元】

兄妹喧嘩 ページ13

…朝だ。
昨日何時に寝たのかが思い出せない。
でも、外出着のまま寝ているってことは、よほど疲れていたのかな。

『ん…時間やばいじゃん』

朝食は通勤中に食べるか。
そう思って自室を出る。

「おはよ〜…ちょっと、起こしてよ」

食卓ですでに朝食をとっている二人。

「すまない！はい、Aさんの朝食」

『あーごめん、朝ごはん通勤しながら食べるからさ。
トースト一枚くらいならいけるかな』

「…お前、仕事行くの？」

『行くに決まってんじゃん』

何、人の顔じろじろ見て。
すると兄は突然電話を手に取った。

「もしもしー、宇髄ですけど。あぁ、A今日仕事休むから。うん。
ありがとさん。じゃーなー」

休むって。

『に、に、兄ちゃん！何してんの！？』

「胡蝶っつー後輩が出てきたわ。話が分かる奴でよかったな」

『もう、勝手なことして…！
休んだ私の分誰が頑張るか分かってんの？他の皆だよ。私はまだしも人に迷惑かけないでよ』

ありえない、理解できない。

「あのな、誰か一人にガタが来たら他の奴が補うのが普通だろ」

『誰がガタが来てるって？…もういい、行ってくる』


仕事に行こうとする私と休ませようとする兄。
大喧嘩の末私は家を飛び出した。

そんなに死にたきゃ行ってこいと言われた。

鼻がつんとする。
落ち着くと、兄の気持ちが少しだけ分かった。体が休養を求めているのも分かった。

しかし足早に会社へと向かってしまう。

すると後ろから足音が聞こえる。

「Aさん！」

『煉獄くん…連れ戻しに来たの？』

「いや、俺にそこまでする資格も義務もない。
…ただ貴方に分かったようなことを言いに来た」

首を傾げると、煉獄くんはまっすぐな目で私を見た。

「Aさんは毎日頑張っているな」

その言葉に意味も分からず目が熱くなってくる。

「…お兄さんに、頑張りを否定された気になったんじゃないだろうか。
違うんだ、貴方がいつも頑張っているのは皆知っている。凄いことだし褒められて然るべきだと思う」

棘だらけだった心がゆっくり丸くされていくようだった。

「ただ心配でならないんだ。天元さんは、心配のために…貴方の頑張りを否定してしまったかもしれない。
そう見えたから、俺は肯定する。Aさんは頑張っている、凄い」

『…ありがとう』

意地を張っていたのが素直になった。
泣きそうになったのを、なんとか堪えた。

「帰らないか」

頷くと、煉獄くんはにこっと笑い私の手を取った。

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