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空白-本物 ページ32

『あー…やっちまった』

倦怠感と頭、節々、喉の痛み。38度前半の熱。

自分のせいで悪化した。Aにあれほど言われたのに。

今日は休んで寝ていることにした。

あの時なら彼女が見舞いに来たりするんだろうが今はそんなことはない。
そういえば服を返しに来ると言っていたか。

まぁここまで来ることはどう考えても無いな。

なのに

「お邪魔しまーす」

『…A?』

すぐにいつもの夢だと思い至った。
先ほど夢に出たら良いなと思って寝たら本当に出たんだろう。

「実弥、この前はありがとうね。上着返しに来たよ」

『おう…』

「じゃあ」

おいおい、夢にしては帰るのが早すぎる。

『もう行くのか?』

呼び止めると彼女は心底不思議そうな顔で戻ってきて、
心を痛めたのか顔を歪めた。

お前のせいじゃねぇって。

するとAの冷たい手が額に触れた。

気持ちが良い。

彼女の手を取って自分の頬に当てた。
これで熱が下がることは無いだろうが。

『Aの気にすることじゃねェよ』

「うん…」

『こうして見舞いに来て貰えんならむしろ良かった』

「へ?」

本人に言ったら正にこんな反応をしそうだ。

『って言えたらいいんだけどなァ』

「言ってるじゃん…ねぇ、夢か何かだと思ってる?」

なんて勘のいい。
…って

『夢じゃねぇの?』

我ながら馬鹿な質問だ。じゃあ熱の幻覚か。

「私は本物だよ」

Aは笑い出してしまいそうなのを堪えながら言う。
いや、なんでお前が、本物のお前がわざわざ見舞いに来んだよ。

理解が追いつかず彼女の手を握る。

「分かった?」

『……』

手をすぐに離した。

どちらにしろおかしな行動を取っていたのは確かだ。

頭に熱がのぼってきて、逆に冷え切っていくような、変な感覚。
人がやらかしてしまった時によく覚える感覚だ。

自分がどれだけ阿呆みたいな顔をしているか知れないので寝返りをうった。

『うつったらどうすんだァ…帰れ』

「ぷっ」

吹き出すなよ。
これでもどうにか絞り出した台詞なんだぜ。

「…てかさ、夢だと思ったってことは
私が夢に出てきたことがあるの?」

頭の中が小さく爆発した。

なんでそんなに勘良いんだよ、今日。


回らない頭を布団の中に隠した。

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作者名:いのり | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年6月7日 19時

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