空白-意図 ページ25
私たちはお互いを避けるようになっていた。
全く口も聞かなかったし。
別に話すこともないからいい…わけでもないか。
あの映画見たのかなとか、あのアルバム買ったのかなとか
新しくできた和菓子屋さんにあるおいしいおはぎの存在を知ってるのかなとか
聞きたかったけど。
話したかったけど。
実弥は友達に戻るでもなく関係を絶とうとしていたんだろう。
『実弥、私のこと嫌いになったのかな…?』
うさごえもんに尋ねてみる。
最近こいつを抱きしめて寝ている。
『嫌い?…そっかあ』
誰がどう見ても未練たらたらだった。
今もそうなんだけど。
せめて友達になれないかな、と思って。
避けるのをやめてみた。
「…」
いつもみたいに一度もこちらに視線を寄越すことなくすれ違っていく彼を
『実弥』
呼びとめた。
『…アルバム買った?』
がんばった。
出来るだけ自然に、あの時みたいに普通に。
実弥は不思議そうに私の顔をじっと見て
こくんとうなずいた。
『なんで無言なの』
あの時と同じ感じで笑ってみると
実弥はちゃんと体をこちらに向けてくれた。
「来月のライブ、行くのか」
『…』
「A」
『あっ、えっと、うん、決めてない』
まずい、実弥と話せて安心してしまった。油断した。
「…相変わらずだなァ」
『何が?』
「なんも」
ずっと無愛想だけどそれもいつものことだ。
『実弥は行くの?』
「悪ぃ、今急いでっから後にしてくれェ」
『…うん』
実弥は無理矢理話を切ると足早に立ち去った。
『実弥はやっぱ私のこと嫌いなんだね!うわーん』
私は自分の部屋でひとりぬいぐるみを抱え何をしているのだろう。
『大嫌い?そっかそっか、あははは』
別に気が狂ったとかではない。
ただ、期待しちゃ駄目だと思った。
そんな簡単にまた仲良くしようなんて
実弥は微塵も考えてないしむしろ避けようとしている。
気まずいからとか、私の顔が見たくもなくなったとかじゃなくて
もっと別の理由で。
その意図もなんとなく分かる気がする。
『でもなぁ…』
なんとなく分かるそれが正解だとしたら…嫌だなあ
私だってそれで実弥が喜ぶならいいけどさ
これじゃ誰も幸せにならない気がするよ。
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