鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

終章 ページ46

私の両親の話をしよう。


「偉いわねぇ、鈴は。父さんが七歳の時なんてこんなんじゃなかったわよ」

お母さんは、美人で優しくてしっかりしていて
周りからも評判のリョウサイケンボ、らしい。

「俺が七つの時なんて、お前は生まれたてじゃねぇか。
適当なこと言うんじゃねぇよ」

お父さんは、若々しい外見と子供っぽい性格を併せ持つ
周りからも評判のバカダンナ、らしい。


『お母さん』

「なぁに？」

『どうしてお父さんと結婚したの？』

お母さんは顔を少し赤くした、ように見えた。
お父さんは眉根を寄せて深刻な顔つきになる。


「…里長様に、無理矢理結婚させられたのよ。政略結婚ってやつ？」

「何言ってんだお前！」

お父さんが怒り出す。

セイリャクケッコン…大人って怖いなぁ。




『お父さんとお母さん、むりやり結婚させられたんだって』

さっき聞いた話を友達にすると、揃って「えー」と声が上がった。

「でも、鈴ちゃんのとこのお父さんとお母さん、
鉄穴森さん夫婦と同じくらい仲良しだって聞いたよ」

「うん、オシドリフウフなんだって！」

鉄穴森さん夫婦は知ってる。

とっても仲良しで有名だけれど
私の親はそういうふうには見えない。




『ただいま〜』

友達と別れて、家に帰ってくる。

みたらし団子のいい匂いがした。

私は、みたらし団子が好きだ。
お父さんに似たのねって、お母さんが笑ってた。


部屋に駆け込んで、びっくりした。

「鈴、少し静かにな」


お父さんのお膝の上でお母さんが寝ていた。

「疲れて寝ちまったみたいでな。
向こうにおやつがあるから、食ってこい」

『う、うん』


部屋を出て、胸がどきどきしていることに気がついた。

お母さんの子供みたいな寝顔も、
それを見つめるお父さんの優しい顔つきも、

私の知っているものとは違っていて。

なんだか、見ちゃいけないものを見てしまった気分だった。


でも、お父さんとお母さん、仲良しだったんだ。

暖かい風が体の中に吹き抜けた気がした。


『…みたらし団子、お父さんにも分けてあげようかな』

家族三人で、おやつにしよう。
そう思ったけれど、やっぱりやめた。


お父さんにお母さんを独り占めさせてあげよう。


その代わり、私はおやつを独り占めするから。

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