鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

三十六.文 ページ37

拝啓


お元気ですか？

私と亭主は相変わらず元気です。

季節の変わり目ですので、体に気をつけてお過ごし下さい。



『うーん、あとは…』

「A、いつまで手紙なんて書いてんだよ」

最近、炭治郎くんと文通をしている。

いつも大変だろうに、まめに文を送ってくれて本当に可愛い。
近況報告をしてくれるのだが、これがまた面白い。


『蛍くん、最近何かあったかしら』

私も何か書きたいのだけれど、なかなか難しい。


この前、愚痴のつもりで蛍くんのことを書いたら
「仲良しですね」みたいな返事がきて恥ずかしかった。


「無いなら無いでいいだろうが。
亭主のことで手一杯だから文は寄越すなと書いておけ」

『あのねえ…』

どうしてこうも自分のことしか考えられないのかしら。


決めた。
今回も蛍くんの愚痴…いや悪口だ。

日頃の恨みがもっと伝わるように書いてやる。






『旦那さんは面白い人ですね。
相変わらず仲が良さそうで羨ましいです…って
なんでよ…』


仲が良さそうな話なんて書いたかな。いや、書いてない。

しかも、

『旦那さんのこと大好きなんですね…』

炭治郎くん、なんか違う。
私、そんなつもりじゃないのよ。惚気たつもりないからね。



「ため息ついてどうした」

『うひっ』

後ろから現れた蛍くん。
手紙をさっと背中に隠してしまうが、それが良くなかったようで。


「ん？何を隠した。見せろ」

『いや、何もないから！見せないから！』

「うん…？怪しいな。俺に見せられねぇのか？」

『そういうんじゃないけど、文とか見るもんじゃないでしょ』

ずいずい追い詰められて、壁に背をついている。
デジャヴ…


『こればっかりは、見せないから！悪いけど！』

「…そうか」

え、そうかって何？怖い。
すると、蛍くんはおもむろにひょっとこを外し、


私の首に柔く噛み付く。


『ひぁ、』

不意打ちで首への攻撃を喰らい、膝を落としそうになる。


「隙ありィ！」

手紙を奪い取られる。
何そのやり方、どこで覚えたのよ…！

睨みつける私をよそに、手紙を読む蛍くん。

「…お前、俺のこと大好きなんだな」

『い、言わないでぇ！』


読み終えた蛍くんは文を畳み…そのまま懐に入れる。

『ちょっと、返してよ』

「断る。思った以上に可愛いから繰り返し読む」

ひぃ、正直…

蛍くんの素直さには舌を巻くことも多いけれど
ちょっと羨ましかったりもする。

三十七.春一番→←三十五

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す