鋼鐵塚蛍が嫁を取ったらしい【鬼滅の刃】

三十二 ページ33

帰るなりお説教が待ち受けていた。

「…お前、みたらし団子で俺の怒りが収まると思ったか？」

『え、怒ってたの？』

実際、大抵のことはみたらし団子で収まるでしょうに。


「俺はずっと言ってるだろうが。
お前がそこまでの浮気者だとは知らなかったな！」

浮気って。

『炭治郎くんに抱きついたこと？あれは仕方ないし…』

「浮気だ！汚らわしいっ、そんな奴だと思わなかった！」

汚らわしいって。


「約束しろ」

ひょっとこが迫ってくる。

「もう他の男に指一本触れるなよ」

『それは難しいと思うなぁ…』

「触れるなよ」

圧が凄い。怖いって蛍くん。


『努めるわよ…でもね』

「文句は聞かん」


『見るからに嫉妬よね？』

いちばん聞きたかったのだけれど。
これっていわゆるやきもちよね？

「む…悪いか！」

開き直った。


『ふふ、悪くないけど。愛されてるのね、私』

「あいっ…そういうんじゃ…嫌だろうが、女房だし…」


ごにょごにょしてる。

蛍くんは行動よりも言葉に照れる方だと思っている。


『私は好きよ』

「なっ…！」

お面で表情が見られていないことは幸運だった。
余裕を装うも、内心すごく落ち着きがない。

「お、前、なぁ…」

蛍くんは分かりやすく動揺している。

ふっと笑いを洩らしてしまう。


『蛍くんほど嫉妬はしないけど』

冗談混じりで続けていると、ひょっとこが距離を詰めてくる。
すこし驚くがそもそも彼の距離感は狂っている。


「…あぁ、Aを愛しているから嫉妬した」

『え』

いつになく真剣な声音に胸が高鳴る。


『あ、えっと…』

「そう言えば、俺の気持ちを汲んでくれるか？
もっと俺のことを考えるか？」

蛍くんはしゅる、と自身の手ぬぐいを取り面も外す。

熱を孕んだ瞳。
その双眸に見つめられると、私は動けなくなるのを知っている。

こちらに手を伸ばして、私の面も取ってしまう。


「はっ、予想以上に可愛い顔だ」

『…っ！』


私はなんとも情けない顔をしていることだろう。
それが蛍くんの何かに火をつけたのは言うまでもない。


「お前もどうせ嫉妬する」

『な、なんのこと？』

「俺が他の女と親しくしていたら、十中八九お前は気を悪くする」

…そりゃあ、するだろうけど。
どうして確信みたいに言うの？


『私は蛍くんほど大人げなくないし…』

「俺に大人げなんてあると思ってんのか？」


ないでしょうけど！

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